とある魔術の禁書目録CP

□Version Alpha side ステイル   移ろいに取り残される世界
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空爆が始まった夜に、インデックスがイギリスへと帰ってきた。
東京の惨状は彼女も知っているのだろう。
誰とも口をきかず、何も食べず、部屋に篭り、誰も入れようとしなかった。
仕方がないのだろう、世界は彼女を否定するのだから。
上条当麻を慕う彼女を、責め、詰り、見当違いな同情をし、否定していくのだから。
しかし、そんな状況が一週間続いては、ステイルの心配が限界を迎えた。

「インデックス。」

この一週間何度となく行った呼びかけ。
返事は一切なく、いつも二・三度で諦めていたが、今日はインデックスが応えるまで一時間でも何時間でも粘るつもりでいた。

「インデックス。粥を作ってきた。料理が得意なオルソラが作ったモノだ。冷めると美味しくなくなるだろう?君のために作ったのだから、ここを開けてくれ。」

いつもどおり、返事はない。

「インデックス。」

返事はない。

「インデックス。」

返事が――――。

「お願いだから、開けてくれ・・・。」

ガチャリと扉が開いた。
一週間ぶりに見たインデックスの顔はやつれていた。

「イン「とうまは悪くなんだよ。」

声をかけようとしたステイルの言葉など無視して、インデックスはただただ主張した。

「とうまは私を救ってくれたんだよ?一年間しか持たなかった私の記憶が一年以上あるのは、とうまのおかげなんだよ?とうまは私だけじゃない。他の皆も救ってくれたんだよ?氷華だって、秋沙だって、皆、皆・・・・!!」

インデックスはステイルの服の裾に掴み掛かり、何度も何度も引っ張る。
その力は弱弱しかったが、思いの強さがそこにはあった。

「とうまは、悪くない!悪くない!悪くないんだよ・・・!!!」

彼女の瞳に涙が溜まっていき、そして、流れた。

「とうまは悪く、」

ステイルは遮るように、インデックスの涙を指で拭い、持っていた粥を手渡した。
思わず受け取ってしまった彼女は、嫌だ嫌だ、と言う様に首を振り、付き返してきた。
それを宥める様にステイルは彼女の頭を撫で、微笑んだ。
ここで、自分は何も言えない。
いや、言ってはいけないのだ。
今からやろうとしている事を誰にも悟られないように。

「ステイル・・・?」

心優しいインデックスは、当麻だけではなく、自分も心配してくれた。
彼女の不安そうな顔を振り切るように、ステイルは踵を返し、駆け出した。
目指したのは、ローラの執務室。
突如入ってきたステイルに、ローラは視線を投げかけただけだった。
それに構わず、一方的にステイルは話し始める。

「インデックスは上条当麻という幻想に囚われている。開放するには、あいつの死しかない。僕も東京へ向かう。」
「・・・好きにすればいいなるわ。」

ローラの返事を聞き、ステイルは勢いよく執務室を飛び出した。
そのため、小さく呟かれたローラの言葉は、ステイルには聞こえなかった。


「どうせ、この世界は既に、魔神の掌の上なりけるわ・・・・・・。」
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