とある魔術の禁書目録CP
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パラリ
教会の片隅とも言える最前列の右端の椅子。
そこから本を捲る音が聞こえた。
長い黒髪が特徴の聖人。神裂火織がそこに座っていた。
普通ならば、教会、聖人、本を捲る音、とくれば敬虔な信者が聖書を読んでいると誰もが思うだろう。
しかし・・・。
「へ〜、神裂のねェちゃんがファッション雑誌なんか見てるにゃ〜。」
事実はこうだったりする。
土御門の言葉に神裂は大袈裟に肩を震わせ、慌てて雑誌を自分の身体の後ろへと隠す。
「つっ、つっ、土御門!勝手に人の読んでいる物を見ないで下さい!プライバシーの侵害です!」
神裂は顔を真っ赤にして土御門に怒鳴った。
「やましい本じゃないないなら、隠す必要もそんな事を訴える必要もないにゃ〜。」
土御門はによによと笑いながら面白そうに神裂を見る。
「うっ・・・。」
神裂は言い負かされて、言葉を詰まらせた。
「で、どんなのを見てたんだにゃ〜?もしかして、同僚のとある魔術師を悩殺するような服でも選んでたのかにゃ〜?」
「違います!」
神裂はめいいっぱい否定して、渋々ながらファッション雑誌を土御門に見せた。
「それにしても、どうしてこんなところで見てのにゃ〜?」
土御門が雑誌をパラパラと見ながら尋ねる。
「そっそれは・・・寮の皆に見られると・・・その・・・。」
神裂は俯き、顔を赤らめてしどろもどろに呟くように言った。
「・・・神裂のねェちゃんは妙なところでピュアだぜよ・・・。」
そんな神裂に土御門は呆れた様に小さく独り言を言う。
「はい?」
その独り言は神裂には聞こえなかったようだ。
「まぁ、そんなことより、神裂のねェちゃんはこういうボーイッシュなジャケットとか似合うんじゃないかな?」
土御門が雑誌の1ページを示して、神裂に見せる。
「そうですね・・・しかし、もう少し薄手のものでないと動きにくいと思うのですが・・・。」
それに神裂はそんな批評をした。
「そうだにゃ〜。」
再び土御門が雑誌をパラパラと捲る。
「動き易さ重視なら、ノースリーブのベストっぽいこれとかどうにゃ?」
「しかし、これでは冬は寒すぎると・・・。」
「下に着る長袖を工夫すればいいぜよ、え・・と、神裂のねェちゃんは柄物は好きじゃなさそうだから・・・この黒のハイネックのセーターとか。」
「黒では上着とかぶってしまいますよ?白がいいでしょうか?」
「白はすぐに汚れてしまうぜよ?セーターとかは基本的にクリーニングだからすぐに洗濯できるわけじゃない。汚れが目立たない色の方がいいんじゃないか?」
「服選びの基本ですね・・・。」
などと話し合いながら、雑誌のページは進んだ。
下着のページは神裂が速攻で飛ばし、男性用の服のページとなった。
「・・・このセーター、ステイルに似合いそうですね。」
神裂が黒色無地のタイトネックのセーターを指差して言った。
「このジャケットとかも似合いそうだな。」
土御門が次のページのフードつきのジャケットを指差して言う。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
たぶん、2人は今、同じ事を考えているだろう。
((ステイルに着せてみたい。))
とある魔術師の不幸な日はこうやって近づいて行く。