とある魔術の禁書目録CP

□約束、もう一度
1ページ/4ページ

覚えていないかもしれない。
小さい頃の出来事だし。
それでも、アイツは自分の中に印象深く残っていた。
こっちはただのレベル3。
アイツはすでにレベル5だった。


「・・・・・・。」


最初の印象は小さくて白いヤツ。
ソイツは自分の背よりも高い場所にある本を取ろうと必死になってた。


「あ・・・。」


俺がソイツが取ろうとしていた本を取ると、ソイツは一瞬驚いた顔をした。
しかし、すぐに俺を睨みつけてきた。敵意丸出しの鋭い目。
何もかも信用していない目だった。


「ほらよ。」


俺が本を渡してやると、目が飛び出さんがばかりにソイツは大きく目を見開いていた。


「・・・俺が誰だか知ってンのかよ。」


ソイツの卑屈めいた言葉に俺はきょとん、としてしまった。
実を言うと、その時俺はソイツが誰だか思い出せなかったのだ。
どこか見た事なるから知り合いなのだろうという安易な気持ちで本を取ってやっていた。
ソイツの顔を見つめている間に徐々に思い出してきた。


「あ・・・一方通行じゃねぇか。」


俺の呟きにソイツ、一方通行は無表情で俺を見ていた。
背筋が凍るほどの無表情だった。
孤独、寂しさ、悲しみ、怒り、恨み、自嘲・・・。
負の感情が詰まっていた。
その一方通行の揺らぐ瞳から目が離せなかった。
なんて寂しそうなのだろう。


「・・・怖くねェのかよ?」


見つめられて戸惑ったのか、一方通行がおそるおそると言った感じで尋ねてきた。


「いや、別に怖くねぇけど?」


俺は首を横に振った。


「まだ、俺はレベル3だがな、すぐにレベル5になって、お前より強くなってやるぜぇ?」

「!?」


その時の一方通行の驚いた顔は見物だった。
学園都市最強でもあんな顔するなんて、こっちも驚いたが。


「じゃあ、待っててやる。どうせムリだろうがなァ!」


そう言って、一方通行はニヤリと笑った。皮肉だけど、どこか嬉しげな顔で。
思い返せば、始まりはあの時だったのかもしれない。
あれ以来、一方通行には会わなかった。
街角で見かけた事は何十回とあったが、会わなかった。
レベル5になるまで、会わないと自分の中で決めていたのかもしれない。
それでも、俺はアイツの事をいつも見つめていた。
目に入るとつい、じっと見つめてしまっていた。
アイツがいつも独りだったから。
アイツがとても寂しそうだったから。
いつも声をかけたい気持ちと、まだかけまいという気持ちが相反した。
そして、結局は声をかけなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ