とある魔術の禁書目録CP

□重荷を背負う者
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燃え上がっていた炎が、突然振り出した雨によって消えていった。
残されたのは焼け焦げた死体とその脇に佇む自分のみ。
パシャッ
不意に水溜りを踏む音が背後で聞こえた。しかし、ステイルは振り返らなかった。
とても良く知っている気配だったから。


「・・・ステイル?」


驚きに満ちた声が雨の音に紛れて、ステイルの耳に届いた。
ステイルはゆっくりと振り返る。


「やぁ、上条当麻。」


自分は微笑めただろうか。


「ステイル!」


当麻が慌てて自分の元へと駆け寄ってくる。やっぱり、自分は微笑む事ができなかったようだ。


「どうしたんだ?大丈夫か?」


心配そうに顔を覗き込んでくる当麻。
自分はそんなに酷い顔をしているだろうか。


「一体何が・・・・・・!?」


不意に当麻が顔を強張らせた。
あぁ、見たか。
そう言えば、この死体の処理、どうしようか?
前はどうしていただろうか?
・・・思い出せない。


「ステイル・・・?」


当麻がなぜか泣きそうな顔をしていた。


「一体何があったんだよ!」

「・・・任務だが?」


自分でも驚くほど淡々とした声が出た。


「いつも通りの任務だ。規定を破った魔術師を処理するという任務。」


そう、これはいつも通り。ローラに言い渡された任務。
教会の必要悪であるネセサリウムの。


「いつもって・・・錬金術師の時は、記憶奪って、顔を整形して、それで処理だったろ?何で、今回は・・・。」


当麻の顔が今にも泣きそうな程に歪む。


「“学園都市を破壊して、イギリス清教の天下を。”そう言って、大規模な魔術を展開しようとしたからね・・・その魔術の範囲に君の寮が入っていた。」

「!!」


気付かない間に来ていた危機に当麻は驚く。


「無我夢中だったよ。インデックスが、土御門が、なにより、君が死ぬかもしれないと思ったら、加減も何もできなかった!」


嫌だ、嫌だ、嫌だ、もう大切な人を失うなど、もう嫌だ。
インデックスが自分の事を覚えていないと言った、あの日。
もうあの日を繰り返したくない。


「ん、ありがとな。」


当麻は泣きそうな辛そうな顔で、それでも微笑んだ。


「助けてくれて、ありがとな。」


ステイルが背負ってしまった重荷を少しでも軽くするために。
当麻は優しくステイルを抱きしめる。


「大丈夫、俺も背負うから。その命の重荷を。」


当麻の優し過ぎる言葉。
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