とある魔術の禁書目録CP2

□君の手を
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美琴は商店街の広場の中央、噴水の端に腰をかけていた。
夏は勢いよく水が噴きあがり、涼しさを与えていてくれた噴水だが、冬の今は水が出る事もなく、溜まった水の水面が木枯らしに吹かれ、小さな波紋を作るのみだった。

「寒い・・・。」

呟き、美琴はてぶくろを嵌めていない手へと息を吐きかけた。
じんわりと指先に暖かさが灯るが、冷たい風にすぐさま冷やされてしまった。
やっぱり、てぶくろを持ってこれば良かっただろうかと思うが、昨日の当麻との会話を思い出す。

『てぶくろ、持ってきてくれないと嬉しいなーって、まぁ、寒い、強制じゃないから、俺のこの独り言だから気にしなくていいからな!』
『・・・なによ、それ?』
『だから、独り言だって!』

デートの約束をした時、当麻はそう言っていた。
だから、美琴は訝しげに思いながらも、てぶくろをしてこなかったのだ。
当麻はまた不幸に巻き込まれたのか、待ち合わせ時間に遅れている。
もう、10分も過ぎている。
しかし、いつもの事なので、美琴はむしろ微笑みながら待っていた。
今日はどんな不幸に巻き込まれたのだろうか?
この前は不良に巻き込まれて、犬に追いかけられていた。
その前は知らないカップルの痴話げんかに巻き込まれたらしい。
遅れた理由を聞いて、笑うのが楽しみだ。
そう、考えていると、道の向こうに当麻の姿が見えた。
向こうもこちらに気付いたのか、手を振ってきた。
そして、手を顔の前に立てて、ごめん、の合図。
美琴は気にしていないというように、笑顔で手を振った。
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