とある魔術の禁書目録CP2
□ミルクチョコ
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「何やってンだ?」
グループのアジトの一つであるとあるマンションの一室で、そんな一方通行の声が響いた。
「何ってチョコ作りだけど?」
結標が、何を疑問に思う事がある、とでも言うように怪訝そうに言った。
「いや、テメェは分かる。こちら側の人間だとしても一応女だからなァ。だけどよォ。」
一方通行は結標の横にいる人物を指差す。
「なンで海原まで作ってやがンだァ!」
「おや、おかしいですか?」
海原は一方通行の指摘にもどこ風吹くと言った感じで首を傾げた。
「僕の国では女性からではなく、男性からの方が主流でしたしね。それに日本でも逆チョコと言って、男性から渡す例も増えているようですよ?」
「お前は日本人じゃなかったのかよォ!」
「おや、この僕の顔と名前が偽物である事ぐらい、会った瞬間から分かっていたでしょう?」
海原の言葉に一方通行は自分が言ってしまった言葉に後悔した。
忘れていた。
そう言えば、この前の戦いで『メンバー』の一人であった少女が『エツァリ』と海原の事を呼んでいたではないか。
「うるせェ、エツァリ。」
一方通行は苦し紛れにそう呼んだ。
「止めてください、今の僕は『海原光貴』なんですから。」
海原は苦笑して、首を横に振る。
「まぁ、いいじゃない。エツァリ。」
「結標さんまで・・・。」
ガクッと項垂れる海原だった。
「手作りチョコと言えば、カミやんも作ってたぞ。」
その時、不意に土御門が会話に入ってきた。
「誰に、ですか?」
海原が結標と共にチョコを細かく砕きながら尋ねる。
「さぁな。同居してるインデックスにでもあげるんじゃないのか?」
土御門の言葉にピクリッと一方通行の眉が上がった。
「インデックス?それ、名前なの」
1人事情を知らない結標が不思議そうに尋ねる。
「ああ、そうにゃ〜。可愛いシスターさんにゃー。」
土御門が楽しげにそう紹介した。
「シスターって・・・何で学園都市にそんなのがいるのよ。」
事情を知らないからこその当然の疑問だった。
「・・・それは、言えないな。」
先程の楽しげな様子を一変させて、土御門は真面目な顔となった。
「そう、ですね。これはおいそれと人に言える事ではありませんね。」
どうやら海原も知っている事情らしい。
「ハッ!表側でも裏側でもない、学園都市自体の向こう側の事かよ。」
一方通行は忌々しげに吐き捨てた。
仮に学園都市側を科学サイドと呼べば、向こう側は宗教が絡む、魔術サイド。
一方通行が手を出せる範囲ではなくなる。
それを上条当麻と言う男は、インデックスと共に関わっているというのか。
何だか、ムカつく事だった。
さんざん人に好きだ、愛してるだの言って付き纏ってきて、いざとなると表側の人間に目を向けるのだ。
「・・・・・・。」
一方通行の心に暗い醜い感情が押し寄せる。
(邪魔してやる。)
一方通行は残酷に笑って、アジトを出て行った。