BLEACH 短編 ウルキオラ

□遠く。
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どうやら俺は人間に恋をしてしまったらしい。

そいつとは、偶々現世で会った。

『初めまして。』

名無しさんは、微笑んで俺に声を掛けた。

驚いた。

何故俺にいきなり声を掛けたのか?

今となってはもうどうでもいい。

恋をした。

人間に恋するのは、おかしいと思う。

自分の気持ちには、嘘はつけない。

しかし、俺と人間は違う。

人間ではない。
俺は人間には、なれない。

分かっていることだが、苦しくなる。

いずれ、現世は滅びゆく。

名無しさんも、死ぬ。

それだけは、どうしても避けられない。

今という時間しか、俺は名無しさんを感じることができない。

すべてを捨てて、すべてを裏切ってどこか遠くに二人で行けたら………

なんて良いのだろうか……

『ウル?』

隣で名無しさんが心配そうに、俺の顔を覗き込む。

時間は、俺たちを繋ぐ鎖だ。

俺は、この気持ちを伝えることはない。

孤独を愛し、今までのように……

無理だと分かっていても………

「大丈夫だ。」

嗚呼、言葉はなんて儚いのだろうか?

ふと空を見上げると

どこか遠くの風景が俺を……俺たちを呼んでいるような気がした。
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