視界は詩界。

□春の応化
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細い指、奏でない音。
硝子のような日々、ヒビ。
咲き誇ればいい花とは違う、透明な花。
白々しく美しい両手を空に掲げれば、綺麗な光が焼いてくれる。


人並みに流されて、人並みに意志を持った。
それだけで何かになれたつもり?
春と旅立ち。
見送る人だかりの中。


病的な程に染まり始めた体、心。
繋いでいた手は、枯れた植物のように……。
色を啜る夢は、何処までが夢なのか。
不細工なユグドラシルの影で眠るからなのか。
花は萎れて、鮮やかに死んだ。


鬱ぎ込んでしまっただけ。
泣きじゃくった部屋で独り、ぽつり。
天井に描く夜、星、月、空。
雲の無い嘘。
白々しく美しい両手を空に掲げれば、綺麗な雨が零れていく。


人波に流されて、人波に呑まれていく。
それだけで何かを失ったつもり?
春と旅立ち。
見送る一人ぼっちの中。


染色と脱色によって壊れた体、心。
変化とは、つまらない繰り返しの中にしかない。
色を啜る夢は、何処までが夢なのか。
不細工なユグドラシルの影で眠るからなのか。
花は萎れて、鮮やかに死んだ。


枯れた花びら舞う。
それが色ならば、透明など捨て去ろう。
花冷えた春の事、旅立ちの日々よ。

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