私的に詩的。

□地下姫の絵本
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石の回廊に敷き詰めた体温、鮮やかに冷めている。
頸を捻り、解らないまま、ただ求めて。
幼き狂気に染まる夜の月は、その紅虐の瞳のよう。
今宵も、また、歌を歌っている。
温かい歌を……。


紅茶が並ぶテーブル、甘い洋菓子も並ぶ。
泣いた椅子は独ツ。
笑う、人形達。
さぁ、歌いましょう。


響くのは悲鳴ばかり。
悦に浸る喘ぎのような声。
腐り、木から落ち、弾け飛ぶ杏子―――アプリコット。
ジャム、色、……歌。


愛と嗜虐を知るには、少し早過ぎた?
排水溝に流れる情熱に、嫌悪と唾を吐く。
皺だらけの洋風の絵本や、乱れた服と髪。
孵して……、全てを贄にするから。
全てを流すから。


……景色……記憶……絵本……、幼き狂気が全てを混ぜる。


ページを捲る音と、温かい歌と、遠い耳。

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