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□桜雨
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今夜は満月










屋形船で夜桜を見ながら
酒を飲む隻眼の男。









もうすぐ、桜が散る頃
少しの風だけでも
ひらりひらり、と
桜の花びらが散っていく









ふと、人の気配を感じて
目だけを動かす









「晋助、…ここに居たでござるか」









万斉が静かに口を開く









「あァ」

「丁度、こんな季節だったでござるな」

「…………。」









少しぴくりと
肩を揺らす高杉。









「もう、一年が経つでござるか…」

「何しに来たァ…用がないなら帰れ」









ぴしゃりといい放つ高杉に
万斉は少しサングラス越しから
切なげな目をしながら









「最近の晋助は何を目的に活動してるか分からんでござるよ」









ちらり、と横目で万斉を見る高杉









桜がひらりひらりと舞って
部屋に入ってくる









「どういう事だァ?」

「…〇〇がいなくなってから変わってしまったでござる」









少しの沈黙









聞こえるのは
桜の木が風に揺れてる音だけ









そんな中
高杉は少し口を開いて…









「俺ァ…大切なモノを護りぬく事が出来なかった…」









切なげに
外の景色を見ながら言う









「誰も…失いたくなかった…だが、俺ァ一番大切なモノを亡くしちまったんだ」









万斉はただ静かに聞いてるだけだった









「俺ァ…もうこれ以上、大切なもんを失いたくねェ…そして、」



















この世界を壊したくて仕方あるめぇよ
















「…………」

「万斉、こんな俺は嫌か?」

「…拙者は……」









体をくるり、と
高杉に背を向きながら










「晋助に付いていくでござるよ」









ガララ……ピシャン











「………俺はただ、ぶっ壊すだけだ」













ザァァァ










風が強く
桜の花びらがぶあっ、と
散っていく









月に照らされながら
桜の花びらが舞ってる光景を
妖艶に微笑む













サアァァァ










風は強くなるばかり



桜の花びらは



ひらりひらり、と










まるで










雨の様に


降り続ける。














桜雨.

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