love
□右手
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きっとあなたは、戦いに夢中で。
私の存在なんか思い出している暇もなかったと思う。
あのとき、一瞬あなたが影に連れて行かれてしまいそうで。
とってもとっても怖かった。
けれど、あなたはちゃんと打ち勝った。
いつも通りの、あの笑みを浮かべて。
大魔闘演武が終わり、ドラゴン襲来を乗り越え、ここに帰ってきた。
ギルドもすっかり立派になって、みんなはいつもの通りのどんちゃん騒ぎ。
でも…。
レビィは、何故か心が晴れぬままでいた。
しっかりした原因はわからないが
きっとここのところ続いた疲れと不安、そして安心を一度に実感し、心がぐちゃぐちゃになっているのかな、なんて考えていた。
つまりは、ちょっとした情緒不安定だ。
本の内容もろくに頭に入らず、レビィは一旦諦めて本を閉じた。
はぁ、と、ふぅ、の間をとったようなため息が自然と溢れる。
きっとこういう気持ちは、時間が解決してくれるのだろうと思う。
特に何をするでもなく、ただぼうっとみんなを見つめていたとき。
「おい」
右側から声がした。
聞き覚えがありすぎる声だ。