novel

□極上
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「…甘ぇ…」


隣のガジルが少しだけ顔をしかめた。

今日は二人とも休みで、
レビィがガジルの部屋に遊びに来ている。

リリーは気をつかってか、
夕方まで帰らないそうだ。


「何の匂いだ、これ?」


鼻がいい彼は、やっぱり気づくのが早い。


「イチゴの香りのリップクリームだよ。昨日買ったの。」

「そんなモンがあんのか。どうりで甘い匂いだと思ったぜ」

「でも、いい匂いでしょ?」

「…まぁな。嫌いじゃねぇ」


匂いがきついわけじゃない。

レビィの匂いと少しだけ交じって、
甘い香りがふわりと広がる程度だ。


ガジルは、ふと思いついたことを訊いてみた。


「それって味もすんのか?」

「え、味?」


聞き返してきたレビィの唇に
なんとなく目がいく。

…噛みつきたい。


「味はさすがに、食べてないから…っん!」


レビィの顔を素早くこちらに向けさせ、この甘い匂いの元である唇を貪るガジル。

優しく啄ばんでから、
だんだんと深く、激しく。


「ん、ふぁ…っガジル、んんっ…!」


息つく暇も与えないほど、
ガジルはレビィの唇を存分に味わった。

ほのかに香るイチゴの匂いに、
レビィが甘い果実に思えて仕方がない。


レビィの頬はすっかり紅潮し、
恥ずかしさからかぎゅっと目を瞑っていた。


「ふぁっ…は、ぁ…っはぁ…っ」


やっと解放され、くったりとするレビィ。


「ギヒッ、味も甘ぇ」


ガジルだけが満足そうに笑う。


「〜…もうっ!バカ!」

「あ?嬉しいくせに」

「〜〜〜っ!!」


ダメだ、勝てない。


「が、ガジルが、あ、あんなことするから…っ、せっかく塗ったリップとれちゃったじゃない!」

「また塗りゃいいだろうが。…すぐ舐めてやるけどな」

「…っ!!」


レビィの頬の色は、
しばらく戻らなかったらしい。








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