novel

□世界で2番目に好きだと言おう。
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結婚して、2年が経った。


あの頃の俺からしたら、結婚なんて無縁だと思ってただけに、未だに信じられないときがある。


隣を歩く小さいこいつは、俺の奥さん。


結婚してからも、何ら変わらず小さい。



変わったことといったら、前より少し大人っぽくなったこと。


2年たっても、こいつのふとした仕草に振り回される俺は、重症なのだろう。









二人は秋口の夜を歩いていた。


お互いに正装をして。


ギルドのメンバーの結婚式があったからだ。


今はその二次会の帰りと言うことになる。


二次会と言っても、いつものように飲んで騒ぐだけ、だったが。





「結婚かぁ…。もう、2年経つんだね、私たち」

「あァ、そうだな」

「まさか、ガジルからプロポーズしてくれるなんて思わなかった」

「…ああいうのは男がするモンなんだろ」


付き合っていたときも、基本的にデートに誘ったりするのはレビィからだった。


そんな彼から、プロポーズをしてくれたのだ。


レビィはその時、感動で泣いてしまったのを覚えている。






「ガジル」


ふと、レビィは足を止め、何か言いたげに夫の名を呼んだ。


「あ?」


「あの…」


「…なんだよ」


待ちきれずガジルが問いかけると、レビィはおもむろに手でお腹を擦った。


「ここに…いる、の」


ガジルは一瞬、突然のことに理解できなかった。


が、すぐにその瞳を見開く。


「いるっておまえ、それ…」


「ガジルと、私の赤ちゃん。…赤ちゃん、できたの」


そう言うレビィの顔は、喜びと不安の入り交じった表情をしていた。


もし、ガジルにいらないって言われたらどうしよう。


面倒だって言われたら、どうしよう。




しばらく返事がないことに怖くなって、レビィはうつむいた。


しかし、その不安は一瞬で打ち消される。


レビィの着ていたマーメイドドレスの裾が揺れ、瞬間。


レビィは、苦しいくらいに抱き締められていた。


夫の、ガジルの逞しい腕で。



「レビィ」


名を呼ばれて顔を上げれば、抱き締められたまま優しく降ってくる口付け。


「ガジル…?喜んで、くれる…?」


「…っ、当たり前だろうが!どこに嬉しくねぇやつがいるんだよ…」


ガジルの一言で、レビィの瞳には込み上げるものがあった。


喜んでくれてる。


自分との子どもを。


「ここに、いるんだよな…?」


ガジルがそっと、確かめるようにレビィのお腹をそっと撫でた。


「うん、いるよ…いるんだよ、ガジル」


「…っ、よっしゃあぁ!!」



珍しく叫び声を上げたガジルは、歓喜のあまりレビィを高く抱き上げた。


「わっ!…ガジル?」


なんて顔をしてるのだろう。


普段からは想像もできないような、


優しくて、泣きそうな顔。




あぁ、この人がパパになるんだ。


良いパパで、よかったね。


レビィはお腹の子に語りかけながら、また泣きそうになった。






「これ着とけ」


冷えるから。


そう言ってジャケットを渡してくるガジルを見て、過保護になりそうだなぁ、とまた微笑むレビィだった。





いつか生まれてくる君に言おう、


世界で2番目に君が好きだと。







→あとがき
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