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□エクシードランド 後編
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「エドラスタウンにようこそ!ここには沢山のエクシードが住んでいるよ!」
黒くて細長い体系のエクシードが、右手をブンブン振りながら出迎えてくれる。
ここはエクシードランドのメインスポット・エドラスタウン。
入り口側に位置する人の文化のアースタウンとは違い、エクシード独自の文化が栄えている…と設定されている場所。
そこでは毎月違うイベントが用意されていて、ランドの人気の理由のひとつだった。
「エドラススペシャルイベント、今月はぼきゅナディが担当するよ!さあ、この万歩計を持って!」
「万歩計?」
「ベルトにつければ良いのか?」
手渡されたのはエクシードの顔の形をした可愛らしい万歩計。
早速ベルトにつけようとしたふたりをナディが違うよ!と静止した。
「振るんだ!!」
「振るのかよ!」
ガコン、と目の前のレールにレギオンの形をした乗り物が現れる。
ナディに誘導されて並んで乗り込む。体格の良いガジルでもゆったりと座れる広さがあった。
何かを置く場所だろうか、レギオンの頭部分に丸いホルダーがついている。
やがて安全バーが下りてくるとふたりを抑えた。
「このレギオンに乗ってエドラスへ行くよ!ここからは色んなエクシードが君たちをエスコートするからね!何があっても万歩計は振り続けてね!獲得歩数によって出口で商品が貰えるからお楽しみに!さあ、冒険の旅に出発だ!名付けて〜」
ビー、と開始のサイレンが鳴る。車体がゴウンゴウンと鈍い音を立てて動き出した。
「目指せ明日の腱鞘炎!ナディのダイエットフルスイング!!=v
「目指したくねぇわ!」
***
「こんにちわーフローなのー」
奇妙な形の木が連なる森を進んでいると、ピンクのカエルの衣装を着たエクシードが現れる。
フローと名乗ったその子はぴょこんとレギオンに飛び乗ると、ホルダーにすっぽりとはまり込む。
「・・・・・・・・・・・・」
瞬きひとつせず、ボーッとしたままのフローは目の前にヒラヒラ飛んできた蝶々を追いかけようとしてホルダーに引っかかりやむなくそれを断念した。ぽやんとした瞳に涙がじわりと溜まる。
「わわ、泣かないで」
「フローがんばる」
レビィが出したハンカチを受け取って、チーンと鼻をかむとフローはまたぽやんとしたままふたりの間を見つめていた。しびれを切らしたガジルがオイ、と口を開く。
「お前、アトラクションの案内するんじゃねぇのかよ?」
「フローもそーもう」
「ふふ、案内お願いね。フローって呼んだらいいのかな?」
片手をあげて元気に答えるフローにレビィが尋ねる。
エクシードは首を左右に振った。
「本当はフロッシュー」
「あら、可愛い名前ね」
「フローもそーもう」
突然ガクン、と車体が傾いた。カタカタと音を立ててレールを登った車体が真っ逆さまに落ちていく。
レビィは両手を上げて叫び、その隣でガジルは前方のバーを握りしめて衝撃のような風圧に耐える。
「フローとんじゃうー」
「うおおおお!」
「きゃー!楽しいー!」
先を行く乗客だろう、時折金切り声の叫びが聞こえてくる。
それほどスリルのある速さだというのに、レビィは何度も続く山谷に余裕で笑ってはしゃいでいた。
「(ったく、強ぇんだが弱ぇんだか)」
無邪気な笑顔につられて口角が上がる。
その気持ちにシンクロするように、車体が大きな山にゆっくりと時間をかけて登っていく。
「そういえばフロー、言ってなかった」
「なにを?」
「これの名前とーたいせつなことー」
「大切なこと?」
「うん、ビニールー」
「ビニール…?もしかして、これのこと?」
レビィが、バーの下に備えてあったビニールを手にして尋ねた。
ガコン、と車体が登頂し止まる。その隙に彼がホルダーから木に飛び移った。
再び動き出したそれが落ちていく。フロッシュがばいばいと手を振った。
「フローのびしょびしょコースター」
悲鳴と怒号がダッパーンッと大きな水しぶきに消えていった。