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□濃紺に咲く
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5分ほど経つと、遠くから急いだようにカランコロンという音が聞こえてくる。
足音でわかるようになるなんてな、と少し呆れ気味になった。
「ごめんガジル!遅くなっちゃった」
おう、と言いつつそちらへ目をやる。
そして思わず、固まった。
白地に淡い黄色の朝顔が描かれた浴衣に、蜂蜜色の帯を締め、紅色の鼻緒がついた下駄を履いたレビィが立っていた。
髪はいつもと違ってアップにしており、走ってきたためか首筋にうっすらと汗が浮かんでいる。
いつもと違う、どこか色気の漂うレビィに心臓が少し早く音を立てていた。
「わぁ、やっぱりガジル浴衣似合うよ!」
「…お、おう、そうか?」
「……?どうかしたの?」
「いや、なんでもねぇ。…いくか」
「うん!」
前を歩くレビィの白いうなじが、自然と目に入って。
一瞬連れ帰ってしまいたくなったのだが、せっかく来たのだし、レビィも楽しみにしていただろうと考え、ぐっと堪える。
会場の方に向かって歩き出すと、人も夜店も増えてくる。
わたあめやりんご飴、金魚すくいにお面。
焼きそばやたこ焼きはもちろん、チョコバナナやクレープも。
どの屋台も列を作って並んでいた。
とりあえず焼きそばの列に並ぶことにする。
「わたし、違うとこ並んでこようか?」
ふいに、そう言って列から抜けようとしたレビィ。
その手を掴んで止める。
「別に急いでねぇし、いいだろ」
「うん?わかった」
一人にしたらどんな輩が寄ってくるかわからない。
考えただけで頭に血が上りそうだ。
とりあえず焼きそばとたこ焼きを買い、わたあめ、それからリリーへのお土産にりんご飴を買った。
会場近くよりも少し離れた丘へ向かう。
花火が良く見えるその場所は、普段より人がいたものの会場よりは快適だ。
ベンチに座り、買ったものを広げて楽しそうにしているレビィを横目で盗み見る。
この、花火が終わったら。
問答無用で連れて帰ってしまおうか。
そんな考えがよぎる。
恋人同士なのだし、咎められることはないのだが。