novel

□存在
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本屋までの道のりは意外と遠い。

急に迎えにきたガジルに、
レビィはどういう反応をするだろうか。

でもガジルは、
何よりもレビィの顔を見たかった。

安心したかった。


ひたすら黙々と歩いていくと、
向こうから歩いてくる人が見える。

青い髪に、黄色いワンピース。
…レビィだ。

あちらもガジルに気がついたようで、
不思議そうな顔をしたまま
小走りで近寄ってきた。


「ガジルー!」

「…よぉ」

「ガジルも、出かけるの?」

「…いや、俺は」


レビィを見て、
想像以上に安心している自分がいた。


「暇だったから迎えにきてやったんだよ」


いつもの憎まれ口も叩ける。

いつもどおりに振舞えた、はずなのに。


「…ガジル、なんか…大丈夫?」


なんで、こいつには。


「…何がだよ。」


聞き返した自分の声は、あまりにも弱くて。


「…ううん、なんか、寂しそうに見えたから…」


寂しい。

さっきまでは、
間違いなくそう思っていたろうな。


「はっ…大した奴だな」


ガジルは薄く笑うと、
レビィの頭にぽん、と手を乗せた。


「…変なガジル」


レビィはそれ以上何も訊かず、
ただふにゃりと笑った。

その笑顔に心底安心させられたのも、
また事実。



おまえがいないと、
俺はあんなふうになるんだな。


「…イカれてるぜ」

「え?何が?」

「何でもねーよ」


こうして笑い合える日があれば、
今のところは満足だ。






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