novel

□印
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「言っとくけどな、こんな風に部屋に入れたりわざわざ休みの日に会ったりすんのお前が初めてなんだよ」

「え…?」

「昔ならそんなこと面倒で絶対にしなかったからな」

「そう…なんだ。私が、はじめて…」


レビィの顔が少しだけ明るくなる。


「それでも不安なら、印でもつけとけよ」

「印…?」

「俺がお前のだっていう印をよ。俺もお前にいつもつけるだろ?」


それはつまり、キスマークのことで。


独占の証であるキスマークをつけることさえ、レビィが初めてだというガジル。


「そっ…そんな、つけ方とか知らないし…」

「思いっきり吸うんだよ。やってみろ」


ガジルはシャツの襟をぐいと引っ張り、


鎖骨が見えるようにレビィに向けた。


「じ、じゃあ…失礼します」


おずおずと近づき、ガジルの鎖骨辺りに吸い付いた。


可愛らしい小さな唇が、懸命に独占欲を形にしようとしている。


「もっと強くだ」

「ん…っ」


唇が疲れてきた。


ちゅっと音を立ててレビィの唇が離れる。


見ると、赤い跡が小さくもはっきり残っていた。


「ついた…」

「これでお前のだってわかっただろ」

「…うん!」

「さァて…」

「わっ!」


笑みを浮かべるレビィの首筋を、今度はガジルが引き寄せた。


「ガジル…?」

「今度は俺の番だな」


不適な笑みを浮かべながら、ガジルはレビィの細く白い首筋に噛み付いた。


「あっ!ちょっ…ガジル!そこは見えちゃうからぁ…っ」


抵抗してみるものの、ガジルが離してくれる気配はない。


「知るかよ。見せ付けとけ、俺のだってな」

「もう…っ!ばかぁ…だめって言ったのに…」


だけど、嬉しいのも事実。


大丈夫だ、彼は自分が思うより自分を大事にしてくれている。


レビィは赤い印を指でなぞりながら、また頬に熱が集まるのを感じた。






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