novel
□隣にいる幸せを。
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「お前、何も覚えてねェのか」
「…うん」
「…よっぽど熱あんだな」
「…熱?」
そう言われてだんだんと思い出す。
レビィは今朝ギルドに顔を出したものの、意識が朦朧としていた。
仕事に行ける状態ではなかったし、かといって一人で寮に帰れる元気もなかったのでギルドの空き部屋で休ませてもらっていた。
覚えているのはそこまでだ。
「ギルドにいたリリーが俺を呼びに来たんだよ。で、連れて帰ってきた」
ガジルは今日休みだったはずだ。
よくよく見ると、たしかにここはガジルの部屋だ。
わからないはずがないのに、それだけ熱でぼんやりしているということか。
「ごめん、ガジル…せっかくの休みなのに、」
「ア?何言ってんだ。ほら薬持ってきたから、これ食って飲んどけ」
トレーに乗っていた深皿には、ガジルお手製のおかゆがよそってある。
「食えるか?」
食欲はないわけではないし、吐きそうなわけではないから食べられる。
レビィは小さく頷いた。
なんとか上半身を起こすと、おかゆをひとくち分乗せた木製のスプーンをずいっと差し出してくるガジル。