novel

□その雨は、微かに背中を押した。
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そのまま歩き出そうとするガジルに、レビィは慌てて傘を開く。

広がった空模様が、レビィに頑張れと言っているような気がして。

レビィは勢いよく、開いた傘をガジルに差し出した。



「…ァ?」



怪訝そうな顔でガジルがこちらを見る。



「こんな雨の中ずぶ濡れになっちゃったら、風邪ひくよ!…傘、一緒に使おう?」



言えた。言ってしまった。

自分の想いを自覚しているだけに、心臓が飛び出そうなほど緊張している。



「…クッ」



長く感じたが実際には一瞬の沈黙のあと、ふとガジルが堪えきれなかったように笑い声を漏らした。



「…?」



その反応がどういう意味なのかわからず疑問符を浮かべるレビィ。



「お前、腕プルプルしてんじゃねェかよ」



背が高いガジルの頭が濡れないよう、必死に背伸びをして傘を差し出していたので一生懸命なのが伝わったらしい。



「相変わらずチビだな」

「な、なにそれ!」



真剣なのに!といじけたい気持ちになったが、ガジルに傘を奪われてそんな気持ちもどこかへ飛んでいく。

ガジルの手に渡った空模様の傘は、レビィとガジルを自身の半分ずつで雨から守っていた。



「帰んぞ」

「う、うん」



いつもより近い距離。

時折触れるガジルの腕。

そして、二人を優しく包む空模様、雨の音。

レビィはまた少しだけ、雨の日が好きになったのだった。



ふと前を歩くリリーと目が合う。

リリーは、何かを悟っているような顔で優しくレビィに笑うのだった。










→あとがき
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