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□魔王な彼と姫君な彼女。
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とある小国の第一皇女、レビィ。
今日も堅く閉ざされた城の中で、本ばかりを読んで過ごしていた。
「はぁ…つまんないな…」
ここにある本はほとんど読みつくしてしまった。
外の世界を見てみたい。
森や海は、いったいどんな形や色をしているのだろう。
塀に囲まれた城の中からでは、何一つ見えなかった。
しかし、外の世界に出ることなど、両親が許してくれるわけがないだろう。
「失礼します、レビィ様。カルロ様がお見えになりました」
「…わかったわ。すぐ行くね」
婚約者である隣の皇子・カルロ。
レビィは正直、彼があまり好きではない。
いつもにこやかにしているが、
どこか貼り付けたようなその笑顔がレビィは苦手なのだ。
婚約だって、小国であるこの国が他の国や魔物に滅ぼされるのを防ぐための同盟の手段に過ぎない。
しかも相手は大国、
逆らえるはずがない。
「レビィ、元気そうで何よりだよ」
「こんにちは、カルロ様」
結婚は3ヵ月後に迫っていた。
同盟のことで話し合うためにこの国を訪れたカルロが、偶然見かけたレビィに一目惚れし、婚約を同盟の条件にしたのだという。
「もうすぐですね、貴女との結婚も。…楽しみだ」
「…はい」
こっちは微塵も楽しみなんかじゃない。
好きでもない、むしろ苦手な人と結婚なんて。
カルロと他愛もない会話をしたあと、
レビィは自室に戻り、窓を見つめていた。
逃げ出したい。
嫌だ、結婚なんて。
まだしたくない。
何一つ自由になっていないのに。
結婚なんかしたら、きっともっと自由がなくなる。
…そんなの、耐えられない…。