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□sort 第五話
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宴が終わり、それぞれがマスターの元へと帰って行く頃。
ナディーアはまだまだ帰るのにはもったいないと夜の街をふらついていた。
「…お」
かすかな魔力が鼻をかすめ、フラフラと誘われる様に進んだ先には少し開いたマンホール。
ほのかに漂う悪臭が下水道へ繋がっている事を感じさせた。
眉間に皺を寄せるナディーア。
正直ここに入るのは気が引けるのだ。
まあ、なぜ魔力の匂いがするかを確かめなければならない、というわけでもないのだが。
これも運命だと、ため息をついた。
そうすると体が重くなった気がしたので、静かに静かに金色の粒となって隙間に入り込んでいった。
魔力源を見つけるため、結束せず暫くフラフラと漂っていたナディーア。
そして まぁ、こんなところにいるのは只の物好きか、どぶ板をねぐらとするような鼠かだな、とか、帰った後あいつは寝ているだろうかなんて思っていた。
その矢先、ひとつ眠りこけているような格好の人間をみつけ、ナディーアは少しドキリとした。
が、近づけば魔力の匂いが違い、髪の色も、背格好も何もかも違う男だった。
普段ならこんな間違いはしない。
宴の後だ。
疲れているのかもしれない。
奴がこんな鼠になっている筈が無い。
ふう、と息をついた。
ま、昔なら珍しくもないので暫く放っておいても良いのだが現代ではなかなか無いであろう。
そう思い、ナディーアは結束して観察してみることにした。
いかんせん粒子状では見づらいのである。
実体化した瞬間にむんと日陰の苔と腐りかけた水の匂いが充満する空気が肺を侵し、思わずかはりとむせる。
その音にビクン、と眠りこけていた男が反応し、目をあけてナディーアを見て距離をとる。
「…おい。」
明らかに怯えるような態度をとる男にナディーアが小動物に話すように優しく言うと、男は「誰だ!」と叫んだ。