Novel

□京菓子
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東京生まれ、東京育ち。生粋の東京人の俺が、この町で何を見付けられるのか。そのときはまだわからなかった。

「…あっつー…、」

季節は夏。日射しは強く、蝉の音は騒がしい。アスファルトは焼けるように暑いだろう。駅から出る京都タワーが出迎えてくれた。じっくりと観ずにバスに乗る。何処に行くかは決めていない。
窓の外を見れば徐々に緑色に染まっていく。ビルの森の中ではおそらく見ることのない光景。目をさっ、と逸らせば手元に目を落とす。今朝買った観光ガイドブック。パラパラと捲り、適当に眺める。

「…お、」

京菓子。
大きく綺麗な色で書かれている。特集ページなのだろう。
バスの停車ボタンを押し、ガイドブックを丸めて持つ。とりあえず、降りよう。
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