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□兄の夢
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にゃあ!

にゃあ!

『ふふ、可愛い〜』

私は、ユキとスノウと猫じゃらしで遊んでいた。

『将軍様が亡くなってから、皆、士気が下がっているな…』

徳川家茂公が亡くなり、徳川の勢力は確実に落ちていた。

『…歴史上仕方がないのかな…』

―『よし、遊びは終わりだよ』―

にゃあ〜…

にゃあ…

二匹とも残念そうな顔をしていた。

―『また後で遊んであげるからね』―

私は、二匹にそう言って屯所の中に戻った。



部屋に戻る途中

『…あれ?』

お兄ちゃんの部屋の障子が少し開いていた。

『いつもなら閉めるのに…』

私は、障子を閉めようとした。

『…あれ?』

中を確かめた時、お兄ちゃんの他に、小さな姿が…

『幸ちゃん?』

―『この“に”はなんの“に”?』―

幸ちゃんが手に持っている紙を見せて言った。

幸ちゃんは、ものすごいスピードで手話を覚えたので、私やお兄ちゃんと話す時はとてもスムーズだった。

―『ん〜?あ、これはね、助詞で相手を差す“に”だよ。
この文は、
『お母さんに、花をあげる』だからね』―

―『なるほど!』―

「…」

手話の内容を見ていると、なにやら国語の勉強をしているように思えた。

私は、お兄ちゃんの肩を叩いた。

―『あ、桜。どうした?』―

―『幸ちゃん、今何をやっているの?』―

―『ん?文章の読み方を教えているんだよ。
桜も小さい頃にやったよな?』―

私は、元々国語が苦手だった。
理由は、『読み取りにくい』。
私が使う日本手話は、『〜は』や『〜を』などの助詞がない。そのため、中学に上がるまで国語が大の苦手だった(今は、普通になった)。

―『うん。お兄ちゃんに教えてもらったよね。
でも、なんで幸ちゃんがここで…』―

―『幸ちゃん、今まで本を読んだ事がないみたいなんだ。
興味はあるみたいなんだけど、文が上手く読めないみたいなんだ。
それで、僕が教えているわけ』―

―『ヘェ〜。幸ちゃん、お兄ちゃんの教え方どう?』―

私は、幸ちゃんに尋ねた。

―『すごく分かりやすいよ!
文を読むのがこんなに楽しいなんて思わなかった!』―

―『ヘェ〜。さすがお兄ちゃん!』―

―『いやいや、誉めないでよ。照れるじゃん』―

お兄ちゃんは嬉しそうな顔をしながら言った。
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