スマイル!

□おサボり
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月曜日

『…まあまあの成績だな』

今日、テストが返ってきた。
数学Bは95点。何故か、数学が得意。
で、問題の現文と英語は、平均点を取りあえず超えていた。

『…中間も頑張ろう』

そう思って、解答用紙を机の中に入れようとした。

しかし

ヒョイ

「!?」

私の手から解答用紙が消えた。
振り返ると

「…新村さん」

あの人がいた。

「あら〜文系、ひっどいね〜。
平均点を超えただけなんて」

人工内耳では音の距離とかは分からない。
だけど、この人から発する声は大きいと思った。

「やっぱり、聞こえないと成績も良くないのね〜」

解答用紙を机に置き、言った。

『聞こえる、聞こえないは関係ないよ!
…でも、言い返したら、もっと酷くなる』

私は耐えていた。
早く、彼女が去ってくれないかとずっと願ってた。

「…ねえ、何とか言いなさいよ」

「…」

黙秘を続ける。

「ねえ、聞こえてるんでしょ?
その機械を付けてるんだから」

そう言って、私の人工内耳を勝手に外した。

ピィ ピィ

「うわ、これ、うるさいわね。
こんなの付けてるなんてね」

人工内耳は、電源が入ったまま外すと
『ピィ ピィ』と音が出る。
もちろん、私には聞こえない音だ。

「返して。それがないと全く聞こえないの」

人工内耳を彼女の手から取り、耳に付けた。

『…うん、壊れてない』

音が入るのを確認した。

「…新村さん、人の物を…耳を勝手に取らないでくれる?
外されると全く聞こえないの」

「あら、私、ちゃんと断りましたよね?」

『断ってないよ!
ってか、絶対断るよ!
壊されたら困るし!』

本当に壊れたらかなりお金が掛かる。

「そういえば、次の授業、体育で柔道ですけど…。
もちろん、出ますよね?」

「いいえ、出ません」

即答した。

「何故?1年の時はやってたんでしょ?」

「出ないったら出ない。…用はそれだけ?
私、行くところがあるから」

そう言って、教室から出ていった。





『本当に嫌。あの空気は…』

私を見下すような目。
周りは見ていない振り。

クラスの中で、私は完全に孤立している。
担任の先生もHR以外では全く会わない。
だから、私が置かれている状況は知らない。

『…知ろうとしていないが正しいか』

そんな事を考えてると、私は無意識に屋上へ向かった。
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