HAND

□顔合わせ
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『…う…ん』

私は蒲団の上で目覚めた。
部屋は和室。
手と足が拘束されて、身動きができない状態だった。

『…どうしよう…手が動かせないなんて…』

そう思っていると

スッ

『あ…』

男の人が部屋に入ってきた。その人の頭は髷だった。

「おはよう、目覚めたかい?」

コクコク

私は頷いた。
部屋が明るいから男の人の口の動きが分かり、読み取ることができた。

「こんな扱いですまないね。足の縄をとってあげるからな」

その人は私の足の縄をほどいてくれた。

『できれば、手の縄もとって欲しい…』

難聴者やろう者にとって、手の自由が利かないのは辛い。だが、その人は手の縄をほどく事はなかった。

「すまないが、広間に来てくれるかな?今、幹部連中であんたについて話し合っているんだ」

…コクン

私はその人の言う事に従う事にした。



暫くして、私と私を起こしに来た井上源三郎さんは広間に着いた。

スッ

井上さんが広間に入り、私も広間に入った。

『…うわ』

中には8人の男の人がいた。

『柄が悪そう…』

そう思った。

「…座れ」

黒髪で紫色の瞳が印象的な男性が命令した。

『この座布団の上に座れっていう事かな?』

私は座布団の上に座り、その人を見た。

『恐らく、何かを聞かれるのよね…。困るな、手が動かせないのに…』

すると

グイッ

『!』

突然、顔を無理矢理向けさせられた。

「ねえ、さっきからなんで僕達の話を無視するの?」

茶髪の男性が睨むような目で言った。

『もしかして、さっきからずっと話しかけられていたの…?』

「黙ってないで、何か言ったら?」

挑発的な発言に私は戸惑った。

『…仕方がないわ…。本当はスッゴク嫌なのに…』

私は深呼吸した。

そして、私は久しぶり声を出した。

「…ゴ…メン…ナサイ」

相手は驚いた様子だった。
周りの男性も同じ顔だった。
それもそうだろう。私は声を出すのが下手なのだから…。
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