HAND
□男になります
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「でさ、桜ちゃんの恰好。誰のを使うの?」
総司が俺に尋ねた。
「俺は斎藤か平助から借りれば良いと思っているが…」
天川は小柄な体型をしているため、同じ背丈の斎藤と平助を推薦した。
「…一君の着物の方が良いじゃない?オレのちょっと汚れているからさ」
「ちょっとどころか、結構酷いだろ?」
「左之さん、なんでそう言うの…?」
「くすくす…」
天川が2人の会話に笑っていた。
「桜〜!笑わなくても良いじゃんか!」
―ごめんね。平助君、本当にコロコロと表情を変えるから面白くて…。
「だからって、そんなに笑わなくても…」
―別に変だなんて思ってないよ。それに、私はそんなふうに表情を変える人は好きよ。
「!…そ、そうか…」
「好き」という言葉に顔を紅く染める平助。
「…桜ちゃんって、天然なんだね…。土方さんに対しても好きって普通に使っていたもん」
「あんな言葉を出されたら男は皆惚れるだろ…」
総司と新八と珍しい組み合わせで話をしていた。
『話の趣旨から離れているぞ…』
俺は平助と話をする天川の肩を叩いた。
天川はすぐにこちらを向き、俺の口を見た。
「着物は斎藤から借りろ。いいな?」
天川はコクンと頷いた。
「斎藤、天川に着物を貸してやってくれ」
「承知しました。…来い、天川」
天川は斎藤と広間を出た。