HAND
□稽古に実戦!?
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平助君のお陰(?)で新選組の稽古を受ける事ができた。
隊士達は木刀だけど、私は竹刀で稽古をしていた。
平助君は用事があるため、道場にはいない。
シュンッ シュンッ
『…懐かしい…。暫くやっていなかったからな…』
お兄ちゃんが大学に入ってから忙しくなり、私と稽古をする事も減っていった。
『竹刀を振っている間は“私”になれる…』
いつも、周りの目を気にしているからか普段の私は自分の姿ではなかった。
しかし、いざ竹刀を握ると私になって真剣に剣道を取り組む。
『…一度、試合をしてみたいなんて…叶わないよね…』
そう思いながら竹刀を振っていると
ガシッ
『!?』
いきなり肩を掴まれ、私は振り向いた。そこには3人の隊士が…。
「おまえ…近藤さんの親戚だからってイイ気になるな」
『え?』
彼らの目は偏見、差別で見るような目だった。周りの隊士達も怯えていた。
「稽古したいから入れさせろ?ふざけんな…!」
ビクッ
隊士の声が道場内に響き、補聴器をした私にも分かった。
「耳が聞こえないくせに…!」
『!!』
その言葉は現代でも言われた差別の言葉。
昔、ろう学校(現在の聴覚特別支援学校)の友達と公園で遊んでいた時、近所のおじさんから「ここの公園を荒らしているのはおまえらか!?」と間違わられて、私達は必死でそれを否定した。しかし
「耳が聞こえないくせに公園で遊ぶな!!」
幼かった私は酷いショックを受けた。
聞こえないだけで差別されたのが悲しかった。そして、怒りも感じた。
現代でも幕末でも障害者の理解がないのは承知の上。しかし、今の私にはこの怒りは抑えられなかった。
「…ウル…サ…イ」
「!?」
やはり、彼らも私の声に驚いた。しかし、今はそれを気にする暇がない。
「ミミ…キコエ…ナイ…カラ…ナニ?オレ…ケイコ…シチャ…イケナイワケ?」
私は間を置いた。そして
「フザケルナ」
普段なら言わないような言葉を言った。
「オレ…ヤリ…タイコト…ヲ…ヤッテ…イルダケ…ミンナト…オナジ…コトヲ…シテルダケダ…オレハ…ケンヲニギッチャ…ダメナノカ…?」
私は彼らに竹刀を向けた。
「…?」
彼らは私の行動に疑問に思った様子だった。
「…シアイ…シロ…!」
私は彼らに試合をするように要求した。
「…まあいい、その代わり、おまえが負けたらもうおまえは稽古は駄目だ」
コクッ
私は頷いた。