HAND

□新入生
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―『千鶴ちゃん、今日ね、新しい生徒がくるの』―

桜ちゃんの言葉に思わずお茶が気管に入ってしまった。

「ゴホッ、ゴホッゴホッ!」

「ダ、ダイジョブ!?」

―『だ、大丈夫だよ。え、新しい生徒って新選組の人?』―

桜ちゃんはコクンと頷いた。

―『その人、私達が手話で話しているのを知っているの』―

―『えッ!?そうなの!?』―

新選組の人に気づかれていたなんて驚いてしまった。

―『でも、その人はこの事を誰にも言ってないの』―

「え?」

それは意外だと思った。

―『皆に言わない代わりにその人に手話を教える事になったの』―

―『へェ〜。その人ってもう少しで来るの?』―

―『…もう来てるよ』―

「?」

疑問に思っていると桜ちゃんが天井を見て

「ハイッテキテモイイデスヨ」

そう言うと

シュンッ!

「!!?」

私の隣に

「突然、すまない。雪村君」

「や、山ざ…うぐっ」

「静かにしてくれ。土方さんに気づかれたくないんだ」

山崎さんが現れた。

―『はい…。桜ちゃん、新しい生徒って山崎さんの事?』―

そう尋ねると

―『そうだよ』―

と言った。

―『なんで…』―

―『君と同じ理由だ』―

「!?」

なんと、山崎さんが手話で話しかけてきた。

―『え!?ど、どういうこと!?』―

戸惑う私に桜ちゃんは

―『実はね、山崎さんは千鶴ちゃんが手話を学び始めた頃からこの部屋の天井で私の手話を勉強してたの』―

『ええええええええええええ!!!?』

あまりの衝撃的な事実に驚いてしまった(心の中で)。

―『今までは天井で勉強をしてたけど、私の希望でこの部屋で勉強する事にしたの』―

―『よろしく』―

―『…よろしくお願いします』―

こうして、山崎さんが手話講座を正式に受ける事になった。
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