HAND

□番外編:妹の過去
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17年前

その日は暖かな陽気だった。

僕とお父さんはお母さんの出産に立ち会っていた。

「お母さん!お母さん!」

「桃、桃!あともう少しで赤ちゃんに会えるぞ!」

「ん、ん――――――――!!」

汗だくになりながら、いきむお母さん。

「頭が見えてきましたよ〜お母さん」

落ち着いた声でお母さんを安心させる助産師さん。

そして

うぎゃあ!うぎゃあ!

「!」

産声が…

そして、そこ声の持ち主がお母さんのお腹の上に乗せられた。

「…か、可愛い!!」

小さな手。小さな足。そして、綺麗な瞳。
それが僕の心をギュッとした。

「…女の子だわ…。なんて可愛いの…?」

お母さんが愛しそうに赤ちゃんの頭を撫でた。

すると

「…赤ちゃん、なんか探してる?」

手をサワサワと動かしていた。

「…もしかして」

お母さんは胸のボタンを外し、おっぱいをだした。

ヨチヨチ

一生懸命に何かを探す赤ちゃん。
そして、おっぱいがあるところに着くと

パクっ

「…おっぱいを探してしたんだ…。赤ちゃん」

一生懸命におっぱいを吸う赤ちゃん。

「お腹が空いていたんだな…。誠の時と同じだな」

「え?僕もそうだったの?」

「ふふ、そうよ。誠も一生懸命におっぱいを吸っていたわよ…誠」

真剣な顔をするお母さん。

「これからは妹を…大切にするのよ。…お兄ちゃん」

お兄ちゃん…。

「…うん!僕、妹を守る!」

「お!頑張れよ、お兄ちゃん」

お父さんが僕の頭を撫でた。



その後、赤ちゃんの名前は桜と名付けられた。
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