HAND

□不思議な少女
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広間に入ると以前に似た光景が…。

『…今回は男装をした女の子か…かわいそうに…』

「天川、斎藤の隣に座れ」

「え〜、僕の隣じゃないんですか?」

「当たり前だ、おまえの隣だったら天川が大変だろ」

「何気に酷い事を言ってるよね。一君」

―話が逸れてるよ。

紙を見せる。

「確かに逸れてますね」

山南さんと私の一言で皆、落ち着いた。

「天川、今日からこの女を新選組で預かる事にした。名前は雪村 千鶴だ」

『雪村 千鶴ちゃん…なんだろう…この子、皆とは違う気配がするような…』

そう思いながら私は紙に書いた。

―初めまして、天川 桜です。よろしくね。千鶴ちゃん。

「…なんで紙に書いて話すのですか?声は出せないのですか?」

千鶴ちゃんは不思議そうに言った。

「…おまえに話して起きたい事がある」

土方さんは千鶴ちゃんを厳しい目で見た。

『…怖いよ、土方さん』

「天川は訳があって新選組が預かっている。ただ、天川と接する時、気をつけて欲しい事がある」

「…なんでしょうか?」

怯えながら尋ねる千鶴ちゃん。

「彼女は耳が聞こえないんだ」

「え…?」

近藤さんが答えに驚く千鶴ちゃん。

「彼女と話す時は紙に書いたり、口を見せて話すんだ」

「そうなんですか…」

千鶴ちゃんは私の方を向いた。

「初めまして、雪村 千鶴です。暫くの間、よろしくお願いします」

丁寧に頭を下げる千鶴ちゃん。

私は思った事を紙に書き、彼女の肩を叩いた。
千鶴ちゃんがこちらを向いた。

―そんなに畏まらなくてもいいよ。歳も近いと思うし、名前も桜って呼んで。普通に話してね。

「…はい!」

とても嬉しそうな顔をした千鶴ちゃん。



この世界に来て初めて、女の子のお友達ができました。
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