HAND

□剣の実力
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「チヅルチャン、ホチョウキアズカッテ」

私は補聴器を外し、ハンカチでくるみ、千鶴ちゃんに持たせた。

『…重い』

初めて木刀を持つ。竹刀とは違い、重量がある。

ブンッ ブンッ

『慣れてないけど大丈夫かな?』

少し心配した。

「準備は良いか?」

斎藤さんが既に戦う目をしていた。

コクン

私は頷いた。

「…総司、頼む」

「了解。僕が審判するからね」

沖田さんが右手を出した。

「この手が挙がったら始めて」

「分かった」

「ハイ」

「…」

「…」

「…始め!」

沖田さんの手が挙がった。

「…」

「…」

お互い、動かないまま相手を見た。

「…」

「…」

『…私からいこう』

少し右足を出した。
すると斎藤さんも私に向かって走り出した。

『…斎藤さんが先か』

斎藤さんの様子を見て、どう動くか一瞬で考えた。

そして

バシンッ!

互いの木刀が交じり合った。

『お…もい…』

男性と女性では力の入れ方が違う。斎藤さんも細くみえるが力がある。

『でも…諦めない…!』

私は徐々に斎藤さんの木刀を押していった。

「…なかなかの…力だな…」

「…ドウモ…!」

バシンッ!

「!」

「あっ!!」

私は











「参った。隊士達の言う通りだな」

斎藤さんに勝った。

『…きちんとした稽古をしてた訳じゃないのに…』

新選組の幹部の…沖田さんと一、二位争うほどの剣の実力者に勝ってしまった。

「その力、新選組に欲しいものだな」

「…アリガトウゴザイマス」

斎藤さんの褒め言葉だと私は思ってお礼を言った。

トントン

肩を叩かれ、私は振り向いた。

「すごいね、一君を負かせちゃうなんて。女の子にしとくのが勿体無いよ」

『…何気に酷い事を言ってるよ、沖田さん…』

「沖田さん!女の子にそのような事を言ってはいけません!」

千鶴ちゃんが私を庇うように私の前に出た。

「はは、冗談だよ。…でも、その力を土方さんに伝えれば桜ちゃんだけじゃなく、千鶴ちゃんの外出許可が出るかもしれないよ?」

今まで、私には外出許可は出されなかった。理由は私の耳の事。もしも何かがあったら私も新選組も困ってしまう。
しかし、私の剣の実力が私や千鶴ちゃんの外出許可にどう関係するのか分からなかった。

「だって、桜ちゃんは剣は強いけど耳が聞こえない。千鶴ちゃんは剣は一君のお墨付きで桜ちゃんの一番の仲良し。そして、お互い信頼している。…自分の背中を任せられる相手って事になるんだよ」

「ジブンノセナカヲ…」

「任せる…」

お互いの顔を見る私達。

『もしかしたら、私は千鶴ちゃんのお父さんの行方を探すのを手伝えるのかも…』

そう思って、私は斎藤さんの方を見た。

「サイトウサン、ヒジカタサンガカエッタラ…ワタシトチヅルチャンノガイシュツキョカヲ…ダシテクダサイ」

「…分かった」

斎藤さんは私達と約束をしてくれた。
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