連載長編「紡がれていくもの」
□chapter 006
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ビシッ! スパンッ!
シュッ! ドゥッ!
晴れ渡る青空の下、真選組屯所の庭では軽快なラリー音が響いていた。
全快した私は、女中仕事の休憩時間に山崎さんとバドミントンをしていたのだ。
一試合終えたところで縁側に腰掛け、お茶で一服する。
「綾ちゃん、やるね〜!」
「山崎さんこそ。私、ついていくだけで精一杯ですよ」
着物にたすきがけという格好なのでちょっと動きにくいけれど、すごく良い汗をかいてとても気分がいい。
普通に過ごしているだけだとどうしても運動不足に感じてしまうから。
「あー気持ちいい!よく動いた〜!!」
「楽しかったね、またやろうよ」
「はい!」
「あ、でもその格好だと動きにくいよなぁ。今度一緒にウェア買いに行こうか?」
「俺が選んであげますぜ。すっげぇエロいの」
「ゲッ! 沖田隊長、いつのまに…」
気配もなくひょっこり現れた総悟くんは、山崎さんが食べようと手にした芋きんつばを取り上げてひとくちで食べてしまった。
「…着ないからね、絶対」
「なんでぃ、山崎だって見てぇよな?」
「えぇ? いや、俺は別に……。あ、でも萌え系ならわりと…」
…エロいだの萌え系だの、何なのコイツら。
「はぁ…撃ちたい。伏射(※命中率が最も高い)で89式ブチ込みたい」
今なら500m先だろうが横殴りの突風が吹こうが確実に仕留められる、うん。
「おぉ、綾さんも言うじゃねぇか」
「総悟くんがエロ変換するでしょ。山崎さんまで乗っかっちゃって、ホント意地悪いんだから」
「何言ってんの、綾ちゃん。俺はいつでも優しいでしょうが」
「いつもは優しいけど、今は優しくない…」
ここはアウェイだぁ! と盛大にヘソをまげた私に「ハイハイごめんよ」と山崎さんはなだめるようにお菓子をくれる。
初対面では警戒してしまったものの、山崎さんは私の事情を知っている数少ないひとりだし、とても親切で気さくだからあっという間に仲良くなった。彼とは妙に馬が合う。
「わぁ、コレ美味しい」
「え、どれ?」
「コレ、コレ」と私はパッケージから取り出したチョコを山崎さんの口に持っていく。
「あ、ホントだ。美味しいね」
「ねー」
「……おい山崎ぃ、くっつき過ぎだ。さっさと仕事に戻りやがれ」
いつの間にか装備していたバズーカを総悟くんが山崎さんに向ける。
ドゴオォォォォン!!!!!
「ぎぃやぁああああああ!」
スレスレでなんとか砲撃をかわした山崎さんは慌てて仕事に戻っていった。
…なんてデンジャラスな職場だ、ここは…。
「さ、綾さん。行きやしょう」
「どこに?」
「ちょいとそこまで」
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