連載長編「紡がれていくもの」
□chapter 014
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「じゃあ、年末年始はゆっくりできるんですか?」
「うん。テロ警戒はするけど、基本は冬期休暇とれるよ。スノボ行こうか」
「行きたい!」
本日は年の瀬、大晦日。
明け方、忍者みたいな格好で潜入捜査から帰ってきた山崎さんに、ちょっと早い朝ご飯を用意しながらそんな話をしていた。
朝ご飯といってもだし巻き卵とおひたしとお味噌汁、白いごはんといった簡単なものだけれど、潜入捜査中はあんぱんと牛乳しか口にしなかった山崎さんにはものすごいご馳走に感じるらしい。
「はぁ、みそ汁…超うまい…あったまる…」
「おかわりありますよ」
「ちょうだい、ちょうだい」
私が厨房に入るのと同時に土方さんが食堂に入ってきた。
「あ、副長。おはようございます」
「おぅ山崎、潜入調査ご苦労だったな。報告書出したら今日はもう休め」
「はい」
どっかりと山崎さんの向かいの席に腰をおろす。
山崎さんにお味噌汁とご飯のおかわりを出して、土方さんにはお茶を出した。
「土方さん、おはようございます」
「おぉ」
「早いですね、ごはんどうしましょう?」
「いや、まだいい。お前、今日は午前中で仕事あがりだよな」
「はい」
「まぁ、座れ」
と隣の席をひかれて座った。
「年明けからの綾の勤務形態とか必要機材の確認すっから、手があいたら俺んとこ来い」
「はい」
「綾ちゃん、これからは同僚だね」
「ですね、ふふ。よろしくお願いします」
「こちらこそ〜」
先日、正式に辞令を受けた。
やるやらない、どっちを選んでもどうせうじうじ悩むんだろうから、それならやってしまおうと思ったのだ。
何ともなんとも情けない決断だけれど。まぁ、いいや。給料もあがるしね。
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