連載長編「紡がれていくもの」
□chapter 015
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今日の昼過ぎに起きた、幕府要人の天人襲撃事件は凄惨な現場だったらしい。
過激派で知られる奇兵隊という攘夷党の仕業で、警備に当たっていた与力組は全滅。
応援要請に応え、かけつけた真選組がなんとか事態を収めたものの、被害は深刻だった。
彼らがここまで負傷したのは、私がこちらに来てから初めての事でー
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夕方になってようやく現場から引きあげてきた皆の顔には疲労の色が浮かんでいる。
病院に行く程の怪我ではない隊士たちの手当てを手伝っていたら、総悟くんが帰ってきた。
先陣をきった一番隊は全員負傷したと聞いていたから、少しは心構えができていたけど、
隊服にも顔にもたくさん血がついていてゾッとした。
「総悟くん。手当てするからこっち…」
慌てて立ち上がると、大丈夫、大丈夫と苦笑いされてしまった。
「綾さんが改良してくれたバズーカ、役にたちましたぜ」
左肩からの出血を手で抑えながら、総悟くんが軽口をたたく。
「役にたったって…こんな怪我してるのに」
本当に役立ったなら、みんなこんなに怪我してないだろう。
「ま、そういう仕事ですからねぃ」
「……」
止血帯を用意して服を脱ぐのを手助けするけれど、手が震えてしまってうまくいかない。
「ごめん、なんか手が…」
「大丈夫、大丈夫。ゆっくりで」
いや、血がまだ止まってないし。
焦るな、焦るなと自分を諌めながら止血帯を肩に添えたところで、土方さんに声をかけられた。
「邪魔すんな、土方コノヤロー」
「甘えてんじゃねーよ。綾には綾の仕事があんだよ」
「……」
使った銃器を整備しなくてはならない。
総悟くんは、ムッとした顔をしながらも送り出してくれた。
「仕方ねぇ。そんじゃ綾さん。またあとで」
「うん、ごめん。途中で」
「いえいえ、あとは土方さんがやりますから」
「俺かよ」
後ろ髪ひかれつつ、土方さんのいる出入り口へ向かった。
「ここはもういい。銃器のほう、頼むわ」
「はい。じゃあ整備室にいますから、何かあったら声かけてください」
「あぁ」
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