連載長編「紡がれていくもの」
□chapter 015-2
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肩の痛みがじわりと増してきて沖田は目を覚ました。
痛み止めが切れてきやがった…。
めんどくせぇと思いつつ、ゴソゴソ起き出すとツンと袖が引っ張られる。
「ん?」
布団をまくって見下ろすと、綾が沖田の袖を握っていた。
「綾さん…」
綾は沖田の布団の隣にもうひとつ布団を敷き、そこに寝ていたのだが、限りなく沖田寄りで寝ている。
これじゃ、布団ふたつ敷く意味ねぇだろィ。
しかも俺の着物つかんで…
綾を起こさないように、ゆっくり袖を持つ手を離そうとしたら沖田の指をぎゅっと握ってきた。
なんでこんな時に限ってそんな可愛い事するかな
「怪我さえなきゃ…あークソ痛ぇ
。痛み止めどこだ……あり?」
部屋に戻ったとき、どこかに放り投げてしまった痛み止めが、枕元に置いてあり、ご丁寧にペットボトルとストローまで添えてある。
…手慣れてらぁ。
薬を飲んで肩の具合をたしかめたあと、隣の布団で眠る綾を見て、沖田はため息をついた。
軍隊にいたのなら、怪我など日常茶飯事だったに違いない。
専守防衛とは言っていたが、それでも仲間が傷ついたり命を落としたりしただろう。
なのに ーー
『好きだから心配しちゃうんだよ』
違いねぇや…。
不発弾処理のときの事を思い返す。
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