連載長編「紡がれていくもの」

□chapter 017
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深夜、薄明かりの灯る部屋を確認し、土方は中にそっと声をかけた。


「綾…起きてるか?」


しばらくすると障子の向こうで人の動く気配。

音もなく障子が開き、ひょいと出てきたのは不機嫌丸出しな顔の沖田だった。


「綾さんなら寝てますぜ」

「おまえな…またかよ。こんな時間に年頃の女の部屋に入り浸るんじゃねぇ」

「土方さんだって来てるじゃないですか」

「俺は用があってきてんだ。おまえと一緒にすんな」

「俺ぁ付き添いです。綾さん、出先で倒れちまったんで」

「倒れた? 何かあったのか?」


沖田は今日の経緯をかいつまんで土方に話した。





「そうか、探してたのか…」

「生死不明どころか、この世界にいるかどうかもわからねぇ相手を待ち続けるのがどんだけ神経すり減らすか…ちっともわかってやれてなかったんでさぁ」

「えらく殊勝じゃねーか」

「殊勝にもなりますぜ。綾さん、寝るまでずっと泣いてましたから」

「……」




「それより土方さんは何の用ですか? 緊急みたいですが」

「……」



沖田の問いには答えず、土方は綾の寝顔を見つめる。


「綾さん、けっこう消耗してるんで悪い話は御免こうむりますぜ」

「…どうかな…、綾にとってはいい話かもしれねぇ」

「?」

「今、外務省から連絡がきた」

「外務省?」

「綾のいた星の捜索を依頼してた件だ」

「!」


沖田は土方のすぐ隣に腰をおろした。


「見つかったんですかぃ?」

「さぁな、そのへんは直接報告したいんだとよ」

「ちっ…もったいぶりやがって」


「事前に綾が帰れるなんて知っちまったら妨害するヤツがいるからだろ。おまえとか……俺とか…」

「アンタもかよ」

「まぁな。今さら帰したかぁねーな」

「はぁー…」


沖田はウンザリだと言わんばかりに大きくため息をつく。

(万事屋の旦那と言い、土方さんと言い…なんだって綾さんに構うんでぃ、面白くねーな)


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