連載長編「紡がれていくもの」

□chapter 017-2
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窓から入る穏やかな朝の光が部屋に満ちている。


素肌に絡むシーツの感触が心地良くて微睡みから覚醒した。


いつもよりすごく静かで

一瞬、自分がどこにいるのかわからなかったけど


総悟くんに後ろからゆるく抱きしめられているのに気づいて




そうだ…私、昨日…



目の前にある彼の手にそっと触れる。


刀を握る手ー


思ったよりゴツゴツして硬かった。

でも、誰より優しくて

私を守ってくれる手


指をいじってたらぎゅーっと抱きしめられた。


「!」

「何、人の手ぇもて遊んでんですか、朝っぱらから」

「も、もて?」


振り返ると眠そうな総悟くんの顔が目の前にあった。

逞しい胸元や肩も目に入る。


「あ…」

「綾さん?」


なんだか恥ずかしくなって、背を向けシーツにくるまった。



昨日の夜の事、いろいろ思い出してしまって…


強引にシーツごと身体を裏返されて、向かい合う格好になる。



「身体、大丈夫ですか?」

「え?」

「どっか痛いとか…」


痛くはないけど、違和感というかなんというか。


「……ダイジョブ、デス…」

「なぜカタコト」


ふっと笑う彼がいつもより男の人に見えて、自分でもわかるほど頬が紅潮した。


どうしよう、総悟くんが格好よく見える…。
いや、実際格好いいんだけど…。



アワアワと落ち着かない私を見て、総悟くんは楽しそうに私を抱きしめ直す。



「もう少しこうしてましょう」

「ん…」


総悟くんの胸に身を寄せて、甘い誘惑に酔いそうになったけれど、だいぶ日が登ってることにハッとした。


「…今、何時?」

「7時すぎですかね」

「ヤバ。準備しなきゃ」


着替えて、準備して、屯所に帰って始業時間ギリギリだ。


「えー、もうちょいまったりしましょうぜ。初めての朝ですぜ」

「何言って…わっ?」


シーツを体に巻いて、ベッドから降りようとしたら足に力が入らずその場でへたりこんでしまった。


「綾さん!?」

「……」


慌てた総悟くんがベッドからおりて私の前にひざまずく。


「すいません、なんか抑えがきかなくて。がっついちまったから」


総悟くんは素っ裸…
全力で目を逸らす。


「大丈夫。大丈夫!」

「でも綾さん、腰砕け…」

「てない! ちょっと油断しただけだもん」

「だもん、てアンタ…」


差し伸ばされた手をかりて立ち上がる。
大丈夫、ちゃんと歩ける。

心配する総悟くんに落ちていた浴衣を押し付け、寝室の出口に向かう。


「シャワー浴びてくる…」

「俺も一緒に」

「ダメです!」


逃げるように足早にバスルームに向かう。
ドアに手をかけたら、追いかけてきた総悟くんにその手を掴まれ、頭を引き寄せ触れるだけのキスをされた。


「!」


そのまま啄ばむようなキスを繰り返す。



キスが甘くて



怒りたいのに何も言えなくなってしまった。

おとなしく彼の腕にもたれかかる。


「綾さん、可愛い」

「もぅ…」


かなわない…

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