短編小説
□熱血警察24時
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今晩、攘夷浪士グループの資金源になっているらしいホストクラブの摘発を行った。
用心深い店だったため、しばらく私と
山崎さん(女装)で仕事帰りのOL客を装い、何度も潜入して、やっと現場を抑えた上での御用改めだった。
山崎さんは普通の和装なんだけど、私ミニ丈でニーハイ。
初めてこれを着たときは足がスースーしてすごく落ち着かなかった。
「私も普通の着物がいいな」
「そっちのがいざってとき、狭い場所でも身動きとりやすいでしょ。ガマンがまん」
ふたりでお化粧しながらそんな会話が何度かあった。
山崎さんがミニ丈の着物着るわけにはいかないし、確かに狭い店内で捕り物が始まったら普通の着物だと動きづらい。
顔なじみになったホストが、私たちに薬物を見せ勧めてきたところで、合図を出し、店の外で待機していた隊士たちが一斉に踏み込んで、あっという間に検挙してしまった。
山崎さんと一緒に外に出ると、一台のボックスカーの前に土方さんがよりかかっていた。
中には盗聴の機械や小型カメラのモニターなど機材が並んでいる。
突撃のタイミングを指揮したのは土方さんだった。
「副長、名前ちゃん無事につれてきました。無理言ってすみませんでした」
整備士の私がこういう現場で動くのは珍しい。
山崎さんひとりより、二人連れの女友達を装ったほうがうまく敵を誘導できると踏んで、今回は特別に私も現場に出たのだ。
万が一、素性がばれたり、危険な目にあうような事があったら、山崎さんは私を死守すると念書まで書いていた。
「おう、おまえは後処理残ってんだろ、現場に戻れ」
「はい、じゃあね。名前ちゃん。お疲れ様」
「お疲れ様でした」
土方さんは厳しい表情で検挙された男たちを見ていたが、タバコの火をつけ一口吸ったあと、私を見て顔をしかめた。
「なんだ、その格好は」
「変装です。一応、仕事帰りのOLの装いで」
「何が変装だ。足が丸見えじゃねぇか。公然わいせつ罪で逮捕だ、バカ」
ガチャガチャと懐からとりだしたのは手錠で
「えっ…!?」
あっけにとられてるうちに、両手を拘束され手錠をかけられてしまった。
「指示出してくるからここで待っとけ、動くなよ」
「土方さん!? 痛っ…」
不機嫌丸出しの顔で私にデコピンした土方さんは隊士たちの方に行ってしまった。
どーすんのよ、コレ…。
「おーぅ、名字。おもしれーもんつけてんじゃねーか」
「あ、沖田さん、助けて」
通りかかった沖田さんが、おもむろにポケットからデジカメを撮り出して、私を撮りはじめる。
「何写真撮ってんですか!」
「名字の無様な姿はそうそう見られねぇから、貴重だぜぃ」
弱味握られた、もう終わりだ。
「ま、土方さんもその格好気に入ってるみてぇだから、暫く付き合ってやんな」
「そうなんですか? さっきわいせつ物扱いされましたよ」
沖田さんは呆れ顔でため息をついて、同情するように私の肩をポンとたたいた。
「いい年こいてツンデレかよ。仕方ねぇ、あんまりウザかったらコレ使って撃退しな」
ふところからそっと取り出し手渡してくれたのは
小さな殺虫スプレー
「……」
「効き目バッチリだぜぃ」
沖田さんは極悪な笑顔でウィンクした。
一瞬、沖田さんに向けて噴射してやりたくなったけれど、その後の報復が恐ろしくて我慢した。
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