連載長編「紡がれていくもの」
□chapter 015
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整備室の洗い場で手を洗おうと袖をまくると
両手だけでなく、隊服の袖や胸元にも血がついていた。
「…っ、〜〜っ…」
ひとつひとつ、丁寧に洗い流していたら、涙で視界が滲んでくる。
昔、こんなふうに血だらけになってしまった事があった。
いくら抱きしめて温めても、少しずつ冷たくなっていく身体が悲しかった。
何もできない自分が悔しくて、大声で泣いた。
今はもうあのときのように、何もできない子どもじゃないのに。
私は涙が抑えられなくなってしまった。
そういう仕事だってわかっていても、怪我したみんなを目の当たりにすると胸がつまる。
あんな思い、二度としたくない。
誰にも傷ついてほしくない。
土方さんが呼んでくれて良かった。
もう少しあそこにいたら、きっと泣き顔をみんなに見られてたから。
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