あなたの隣

□02義母
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「あ、そういえば…お名前は?
私は大喬といいます。
あなた家は…家族とか…」

一気に言われてすこし混乱しながら一つずつこたえていく。

『名前は…ありません。
生まれて…この三年間…呼ばれたこと…ないから…
あ、でも“疫病神”と呼ばれてました…』

悲しそうな表情をするわけでもなく、無表情に淡々とのべていく。

『家は…そうですね…だいたい東の方だと思います

家族は…私のせいで亡くなりました。
顔すら知らないので特徴はさっぱりですが…』



大喬はやっと莉喬の体にところどころ傷や痣があった理由がわかった。


虐待。

やせ細った体…、これは

育児放棄…。




「…あの、言いたくないなら…いいんですけど…
なぜ…両親の顔の特徴…しらないんですか?」

『…長くなりますが…』

「かまいません」

―――――――――。

ある一家に二人の夫婦がいた。
どちらも幸せそうな顔をしていた。
なぜなら、二人の夫婦の間に子ができたからだ。

時がながれ、子が生まれ一年たったころ…。
一歳にしてある程度喋れるようになっていた。

しかし、はじめての子育てでなにが変なのかわからない、それに子供そっちのけで二人は談笑していた。

そして、子が言った。

『…お父さん…あと半月で死んじゃう』と。

夫婦はびっくりしたが、構ってほしい冗談だと思いほおっておいた。

そして半月たち…夫が亡くなった。
そして次々に子は言った。

『…**ちゃんが明後日大ケガする』
『となりのおじいさん明晩に死んじゃう』
『あそこの……』


子が言ったことはすべて現実となっていった。

「やめて、やめてよ!
なんなのよ、あんた!!!」

バシッ…。

その時、はじめて母に殴られた。
「私はあの人がすべてだったのにっ!
あんたのせいであんたのせいで!!!」
ここから母の虐待がはじまった。
『…いった…い…』
「うるさい、うるさい!!

なんで未来なんかわかんのよ!
それも人の不幸なことばかり!
あんたのせいで私まで変な目でみられたのよ!」

母は子に跨って頬を打つ。

「…そっか…あんたの目…潰せばいいのかなぁ…
ふっ…フフフ…」

母の手が子の目に近づく。

『いやっいやぁぁあ!!』

「おい、どうした!?」

子の叫びに気付き青年がかけつけた。

母は小さく舌打ちをしてからニコッと笑った。

「なぁにも?
この子の躾…ですよ?」

「なにが躾ですか!
こんなの虐待ですよ!」

「もう、なんなの?
家の事情に首を突っ込まないでよ!」

母は跨るのをやめて青年と話はじめた。


子はそれを傍観していた。

「なにを言ってもわからないみたいですね!!
ほら、行こう手当てしてあげるから…」

青年は子を抱っこして家をでた。
子は顔は無表情なものの体はガタガタと震えていた。
青年は子の背中を撫でながら目的地へむかった。


「ここ、俺の部屋ね…
君、いまいくつ?」
『……一歳…』
「へぇ、俺の子より6つ離れてるにしても、一歳にして話せるなんてすごいなぁ…」

部屋についたがそのまま抱っこしながら椅子に腰をかけた。

「ほら、腕とかだして手当てするから…」

青年は手際よく消毒したり包帯をまいたりなどしていった。

『……』
こういう時、なんて言えばいいのかわからずオロオロしていると青年は少し笑った。


「こういう時は、“ありがとう”って言うんだよ…」
『あ…りが…とう…?』
「うん、ありがとうだよ」

『あの、…ありがとう……』
「よくできました」

青年はニッコリと笑った。
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