狐の落描き

□壱
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昔から妙なモノが見える。







そういう自覚はなんとなくあった。


なんとなくというのも、周りが皆見えていたのであまり気にしなかったからだ。


どうも俺の血筋はそういうモノが見えるらしい。


だから小さい頃から周りにはソレが見える人が多くいて、いろんな話を聞いた覚えがある。


確かその話をしてくれた人の中には、ソレを祓う力を持つ人もいた。


そうしてたくさんの人の話を聞いていて分かったことがある。




強い力を持つ人ほど妖怪からよく狙われ、人からも一線を引かれているということだ。




自分が祓う力を持っているのは知っていた。
強いかどうかはよく知らない。


でも昔の俺は子供ながら空気を読んで、とりあえず本気で力を使うことはしなかった。

さらに言えば力を感じとられないようにカモフラージュすらしていた。


そうすれば妖怪も目を合わせなければそうそう襲ってくることも無く、一線を引かれることも無い。



そうやって過ごして早十数年。


俺はとても穏やかな毎日を過ごしている。






はずだった。







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