狐の落描き

□壱
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目を覚ました場所は森。
どのくらい気絶していたのだろう、とぼんやり考えてみる。



『……やってしまった』



ぽつりと呟く。



気だるい体を起こして周りを見渡した。



木、木、木、木、木。



どこを見ても木しかない。
何故突然こんな場所に来てしまったのか。



それは数分前に遡る。






   






今日という日は、それはそれは普通の日だった。



相変わらず妖怪や幽霊はうろついていたが、危害を加えてくるような輩はいなかったし、これといった何かは全く無い。


とても平和な一日だった。


……問題は学校から帰ってから。


俺は美術部に所属しているので、頻繁に絵を描いたり彫刻をしたりする。
家でも趣味としてやっているが、一度も何か作品を完成させたことはなかった。


完成させたら力が宿ってしまうからだ。
普段なら大抵を未完で破り捨てたり、叩き壊す。


ちなみに昔は文字にも簡単に力が宿ってしまい、何度破り捨てても書き直せば宿るので抑えるのに苦労した。



少し話がずれたが、今日も勿論破り捨てるつもりだった。



……が、俺は長いこと力を抑え続けたんだからもう完成させても力宿らないように出来るかも?

とか思って完成させたのが見事に失敗に繋がった。


完成してからも何も起こらず、なんだ大丈夫なのかと油断して絵に触ると、絵に指が飲まれた。



しまった、と思ったのもつかの間。





あっという間に絵の中に吸い込まれてしまった。






.
   







で、今に至る。





『…………あー…』





間の抜けた声が森に響く。


森の絵を描いたら、森にワープ出来る絵になってしまったわけだ。

でも想像で描いただけだったからここが何処かなんてさっぱり分からない。



『まー来ちゃったら仕方ないか…』



と、危機感全く無しで独り言を言っていると、何処からか地鳴りのような音がした。

音は徐々に近づいてくるようだ。



それが馬の蹄の音だと気づいてからそいつ現れるまでおそらく五秒も無かっただろう。







『…………は?』







そして突如、俺の意識は再びブラックアウトなされた。







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