長編置き場

□2
1ページ/4ページ




ゴツゴツした岩壁に背中を預けて、足元の小石を軽く蹴飛ばした。目の前では自称暁のリーダーだというピアスだらけの男が暁の目的やら方針を語っているが、飛段はそんなことどうでもよかった。
ここ…S級犯罪組織、暁に入ったのは別に世界征服だとか戦争だとかそんな理由じゃない。確かにジャシン教を世界に広めるいい糧にはなるだろうが、今飛段の脳内は全く別のことで埋め尽くされていた。
そして、それを説明するにはもう少し時間を遡らなければならない。



あの時、一瞬だけ見た不死の男。自分の得た少ない情報を元に飛段はあちこちに聞き回り、隠れた情報屋から男の着ていた外套が今少しずつ危険視され始めている犯罪者組織、暁のものだということを聞いた。ついでに、あの時飛段を襲った賊の主格の男が、裏ではそれなりに高額な賞金首だったらしいことも聞くことが出来た。
暁はS級の、それこそ極悪人と謳われるくらいの犯罪者ばかり集めているという。今の自分が行ったところで首だけにされるのがオチだろう。
以前の自分ならばそれで構わない、むしろ有難いと思っていたが、今は違う。生きる意味を見つけたのだ。彼はきっと、自分と同じ本物の不死だ。彼なら自分を理解してくれる。自分の便利さも、チカラも、苦しみも理解してくれる。


もう独りでいることもなくなる。


飛段は情報屋に礼を言い、埃っぽい路地裏から出た。男が何者かわかったとはいえ、ただ暁という組織が存在することしか掴めていない。本拠地はどこなのか、目的は何なのか、依然として謎に包まれたままである。もう少し調べてみるべきかと考え込んだ飛段の頭脳にふと名案が思い浮かんだ。自分が暁のことを調べてるとわかれば、向こうの方から接触してくるのではないかと。


しかし表立って動いていない極秘中の極秘である組織のことを嗅ぎ回る行為がその組織に対して悪意ある行動になることが、学の足りない飛段には少しばかりわからなかった。

そして数ヶ月後、見事に飛段は暁の下っ端と思わしき者たちに刃を向けられ、一人の男の前に連れて来られていたのである。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ