長編置き場

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ハッと目を覚ました飛段は全身の激痛を堪えながらのろのろと起き上がった。
辺りは真っ暗闇で、あれから半日しか経っていないのかそれとも何日、何ヶ月経ったのか、正確に知る術はない。だがある程度の経験から、恐らく一日くらいは死んで(気絶して)いたのではと推測できた。

まだぐらぐらと定まらない意識を何とか正しながらゆっくり歩く。とりあえず自分の腕を見つけなければいけないのだが、あの男の爆風の勢いからしてかなり吹き飛ばされただろう。
体が半分ほど地面に沈み、頭部がぐちゃぐちゃで原型を留めていない死体の横を通り過ぎた。あの爆風で叩きつけられたのだろう、足や腕が変な方向に折れ曲がっている死体もあった。

しかしあちこち歩き回ったが、主格の男の死体だけは見当たらなかった。



あの男は何者なのか。何故死なないのか。本当に自分と同じ不死なのか。次に会った時、自分を受け入れてくれるのか。脳内はそんなことばかりが渦巻く。飛段は足を引きずりながら歩いた。
宛てのない自分の前にいきなり姿を現した不死の男。きっとアレは己の神が、ジャシン様が引き合わせてくれたに違いない。


彼こそが、自分の神なのだ。



足にガツリと何かが当たった。月明かりを頼りに覗き込めば、真っ赤な三連鎌、自分の武器が落ちている。あの爆風で飛ばされたらしいそれをやれやれと拾って背中に引っかけ、また歩き出す。
数時間ほど歩き続け、辺りが明るくなりだした頃、ようやく切断された右腕を見つけた。纏っていたボロい布切れの裾を裂き、悪戦苦闘しながら右腕を千切れた箇所に固定した。飛段の回復力は不死故に常人と桁が外れている。それに、皮肉にも綺麗に真っ直ぐした切り口なので、こうして合わせておけば半日もすれば治っているだろう。


あの男、特徴は黒地に赤い雲の浮かんだコートに頭巾とマスク。

そして、見る者に威圧感を与える、あの目。



よし、と一息吐いて飛段は歩きだした。




必ず彼を見つけてやる。

どれだけ歩こうとも、どれだけ傷つこうとも、何年、何十年かかろうとも構わない。あの男も自分も不死なのだから。


辺りを照らしだす朝日に向かって飛段は次の街へ歩いていった。それは希望に向かっているのか、それとも己の身を焦がし溶かす災厄に向かっているのか、飛段自身にもわからない。


だが少なくとも、生きる希望は、見つかった。














右腕の傷


to be continued....
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