長編置き場

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ペインの言葉に一瞬辺りが静まり返る。いや、この場の3人が何も話さなけず動かなければ音は生まれないのだが、つまりは3人とも話さず微動だにしていないということだ。

「………………は?」

最初に口を開いたのは意外や意外、角都だった。自分はたった今パートナーはいらないと言ったところなのにこの男はなにを言い出すのか。そう言いたげな角都に小さく笑ってペインは飛段に説明した。

「角都はいつも気に入らない相方を殺すんだがな。お前ならば大丈夫だろう」

「…こいつが?ふざけるな。見るからに腹立たしいガキだろう」

ガキと言われたことに少しカチンときたが、すぐそれも気にならなくなった。ペインが言うには暁はツーマンセルが基本、角都には今パートナーがいない。つまり自分がこの男の相方に、最も近くにいる存在になれる。やはりこれは神の導きに違いないと飛段は自分が高揚していくのを感じていた。

「まあそう言うな。こう見えて飛段は不死身だからな」

「不死身…」

ペインがそう言っても角都の不機嫌は少しも良くならなかった。苛々としたオーラを隠さず、剰え相方になった飛段を見ようともしないで、眉間に更に深い皺を刻んでから二人に背を向けた。

「角都、どこに行く」

「……次の任務まで仮眠をとる」

「その前に、指輪を渡してやれ。お前が持っているんだろう」

背中を向けて歩き出そうとしていた角都がぴたりと止まり、ペインの方にその視線を煩わしそうに、まるで貫かんとするかのように鋭く通した。

「パートナーなどいらんと、」

「角都、文句を言ってくれるな。これはもう決定事項だ」

ペインはその殺気立った視線も物ともせずに、先ほどと同じ、柔らかいが有無を言わさない口調で角都にそう言い放つ。角都はしばらくペインを睨んでいたが、やがてそれも無駄だと悟ったのかため息をついて懐に手を入れ、何かを取り出した。
そしてその何かを無遠慮に飛段へ放った。ただでさえ光の少ない暗い部屋の中で、それは松明の火を一度だけ身に受けてキラリと光り、飛段の近くに落下してくる。飛段は慌ててそれをキャッチし、まじまじと見つめた。

「なんだァこれ」

「それは指輪だ」

ペインがそう言うがそれくらい見ればわかる。つるっとしたグレーのボディの上に、半球状の石が乗っかっている。真上から見下ろせば半球状の中には“三”と書かれていた。石の色は土色というか、くすんだ橙色をしていた。

「それはまぁ暁である証みたいなものだと思ってくれればいい。左手の人差し指に嵌めておけ」

「ふーん…」

適当に相槌を打ってから指輪を左手の人差し指にグッと押し込んだ。少しきつかったが、どうせ外す時など来ないから大丈夫だろうと思い、一思いに押し込んだ。


そうしていると、バンと扉を強く叩く音がした。何事かと顔を上げれば、角都がたった今入ってきた扉から出て行くところだった。閉める時にも必要以上に立てられた音に、壁にかかった松明の火がぐらりと動く。とうとう出て行く時まで、角都は飛段の顔を一度しか見なかった。
何だよあいつ、と呟いた飛段にペインはああいう奴なんだ、とフォローになっていない慰めを口にする。

「奴は暁でも結構面倒な奴だからな。気長に付き合えばいいさ」

「気長に付き合ってくれるタイプじゃなさそーだけどなァ…」

どうやらあまり気に入られていないらしく、第一印象は最悪なようだ。しかし焦る必要はない。自分は彼のパートナーになったのだ。一番近くにいれる存在に。


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