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□一輪の花を君に
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無限城で起こった最後の大きな戦いから一年、あれから無限城は少し平和になった。

とは言え争いが無くなったとも言えない状態で、今もMAKUBEXをリーダーとした新制VOLTZが治安を維持する為に活動を続けていた。

もちろん、見回りも定期的に行なわれている。



「すまないな、花月。MAKUBEXに用があって来たというのに見回りに付き合わせてしまって。」
「かまわないよ。MAKUBEXには頼まれ物を届けに来ただけだから。」

つい先程、見回り中だった十兵衛は、MAKUBEXを尋ねて無限城に来ていた花月と偶然出会い、行動を共にしていた。


「あ、十兵衛。止まって!」

路地を曲がった所で、花月が十兵衛の服の裾を引いた。

「ん?どうした。」
「足元、花が咲いているんだ。」

花月に言われて同じように目線を下げると、そこには小さくて可愛らしい花がひっそりと咲いていた。

「亜麻の花だね。」

普通、亜麻の花は寒い地方にしか咲かない花だ。
しかし此処は無限城、陽の気が満ちているこの場所ならば、咲いていてもおかしくはない。

「可憐な花だな。争いに巻き込まれないと良いのだが…。」

そう、花が咲く環境は整っていても、争いに巻き込まれる確立が高いのだ。無限城は。

「そうだね。此処で頑張って咲いているのに散らされてしまうのは惜しい…。」
「鉢では育てられないだろうか?姉者は花が好きだからな。きっと綺麗に花を咲かせてくれる筈だ。」

こんな陽の当たらない路地で、いつ散らされるかわからないよりは、花が好きな朔羅に育てて貰った方が良い。
十兵衛は、手近な場所に捨ててあった器を拾い上げると、そこに土ごと亜麻の花を移した。
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