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□碧と鈴の物語
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町の裏通りで人の泣く声がした。
小さくて弱々しい声だった…。
散歩の途中、碧はその声に気付いた。
裏通りは、表通りほど騒がしくない為、風の音のような小さな音も聞こえるのだ。
「誰か居るの?」
ふと辺りを見回しても、誰かが居るようには思えない。
辺りは一面廃墟のような建物しかない。
しかし、その廃墟から声が聞こえるのだ。
「誰か居る?」
声がする方へと呼びかける。
中を伺う。
何だか外と違う空気がした。
薄暗い中に、開け放たれたドアが見えた。
その向こう側は………。
部屋中に広がる赤と、動かない大人達。
その向こうで何かが動いた。
倒れて動かない大人の奥で、頭を抱えて震えている少女が居た。
「大丈夫かい?」
近寄って、同じ目線で話しかけてみた。
「いやっ…!!来ないで!」
話しかけた途端、少女は後退り碧を拒んだ。
「大丈夫、僕は何もしないよ。」
碧は、更に少女に近付いて優しく頭に触れた。