オリジナル図書館
□碧と鈴の物語
2ページ/3ページ
しばらくすると、少し落ち着いたようで、何があったのか少女は話し始めた。
母も父も、殺されたと言うのだ。
「私だけ残されちゃったな…。こんなに苦しいのにね。いっそ私も死んでたらよかったのに。」
死んでいたら、こんな苦しみを味わう事も無かった。
いっそ、私が居なかったら父も母も死なずに済んだのかもしれない。
「それは違うよ。君には君と出会うべき人が居るから生きているんだ。それに、君の親は君を守って亡くなったんだろう?君に生きてほしいから守ったんだろう?だったら君は生きなきゃいけない。」
残された者の悲しみは、表しきれない。
でも、残していった者の苦しみも、言葉には表せない。
「でも、きっと私は無理だよ。生きていく場所が無いもの。」
そう、彼女には帰る場所が無い。
「だったら一緒においでよ!僕が必要としてあげるから。だから生きよう。」
自分を必要としてくれる暖かい言葉。
少しだけ生きていたいと思えるようになれた。
「ありがとう。君に逢えて良かったよ。」
この時になって、ようやく彼女は微笑んだ。
「君って言うの止めない?僕の名前は碧だよ。」
君は?と聞かれて少女も答える。
「私は鈴。」
「いい名前だね。これからよろしくね。鈴。」
これが碧と鈴の出会いだった。
きっと、鈴にとって碧は会うべき人だったのだろう。
→後書き