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□碧と桂の物語
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†最初の転生者†

もともと孤児だった碧は、幼い頃毎日神に祈りを捧げていた。

まだ皆に会う10年前、碧は祈りを欠かした事が無かった…。



「神様、お願いです。僕に家族をください。」

孤児院に居たなら家族と呼べるような人が居ただろうけど、碧はスラム街のストリートチルドレンだ。しかも、性格故に仲間と呼べるような人も居ない。
そんな碧が安心出来る場所は、いつも来ているこの教会くらいだ。

「おや、碧くん来てたんですね。おはようございます。」
「おはようございます。神父さま。」

いつも、こうして神父やシスター達に挨拶をするのも碧の日課になっていた。

「ケイトは中庭に居る?」
ケイトと言うのは、この教会で飼っているラブラドールレトリバーだ。祈りを済ませた後、碧は必ずケイトの所へ行っていた。

「ええ。少し前に散歩から帰ったところですよ。」

碧は神父にペコリと頭を下げると中庭に走っていった。



「ケイト!」

中庭に入ると直ぐにケイトは碧の傍まで近づいてきた。
擦り寄って甘えてくる。

「ケイトが僕の家族だったら良いのに…。」

親から与えられなかった愛情を向けてくれるケイトが碧は大好きだった。
このまま此処で暮らせたら…と思った事も何度か有った。
ケイトや神父さん・シスター達と一緒に。

しかし、自分一人が教会で暮らすなど出来る訳が無い。
保護を求める孤児は沢山居る。
特別扱いなど、争いの種にしかならない。
だから、今はこれで良いのだ。
陽が落ちるまでの幸せが有ればそれで良かった。
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