Long〜テニプリ〜

□お兄ちゃんのドタバタ子守合宿!!
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8月某日・東京都内にある大規模な合宿施設で中学テニス部の強化合宿が行われる事になった。
その合宿に参加する学校は、都内からは青春学園・氷帝学園・山吹中・不動峰中・聖ルドルフ学園、県外の学校からは神奈川代表立海大附属中である。
只今の時刻午前9時、全学校が施設前に集合し総監督と勤める竜崎が合宿について説明を始めた。
「え〜、今日から一週間此処に居るメンバーで強化合宿を行う、そのうえでいくつか連絡事項がある。まず、この合宿の総監督は青学監督の私が務める。そして副監督は氷帝学園の榊監督が務めて下さる。また、皆のまとめ役として部長を立海大の真田弦一郎君、副部長を氷帝の跡部景吾君に務めてもらう!じゃあ、真田君に跡部君それぞれ一言ずつ良いかい??」
竜崎に呼ばれ、真田と跡部は前に出て着て、最初は部長である真田が話し始めた。
「部長に選ばれた真田だ。今回は敵校・味方校関係なく、己の実力を伸ばす為に切磋琢磨してもらいたい。此処での練習は普段やらない練習方法を多少取り入れている、皆気を引き締めて懸かれ!以上だ」
真田が話し終わり、続いて副部長の跡部が中央に立ち話し始めた。
「俺が部長じゃねぇってのが不満だが、まぁいい。今回テメェ等をまとめるのに副部長に選ばれた氷帝の跡部だ!この合宿の間みっちり扱いてやるから覚悟しな!!」
跡部の独特な挨拶が終わり、また竜崎が話し始め皆も真剣に話を聞いている中、約1名だけ心ここに在らずの者が居た。
それは、青春学園3年の越前リョーガだった。
彼は朝からこの調子で、ボーっとしては『はぁぁ〜・・・・』とため息をついている。そして今も盛大に溜め息をついている、今の溜め息で今日は計59回の溜め息を吐いた事になる。
そんな状態で居ると、いつの間にか説明が終わったのか自分の前に並んでいたチームメイトの菊丸が、顔を覗き込んでいたので驚き思わず叫んで後退りしてしまった。
「おわぁぁぁぁ!?」
菊丸はリョーガの反応にちょっとムッとした様で、口を開いた。
「もう!!何だよその反応失礼しちゃうな〜!越前が何回呼んでも返事しないから心配してやったのにさぁ」
菊丸の後に続いて、他のメンバーも心配そうに聞いてきた。
「越前、英二の言う通りだよ、今日様子がおかしいよ?」
「何時もの越前らしくないぞ??」
「気分でも悪いのか??」
「越前先輩どうしちゃったんっすか?」
「フシュ〜・・・・大丈夫ですか?」
「越前が他の事を気にしている確立99%・・・・」
「悩み事なら俺達が聞くよ?」
普段明るく、陽気なリョーガが一言も喋らなかったせいか、かなり心配してしまった様だ。仲間のそんな様子にリョーガは、『悪い事しちまったな・・・・;』とちょっぴり反省しつつ河村の言葉に甘え、自分の溜め息の原因を話した。
「悪い、心配させちまったみたいだな。別に体調が悪い訳じゃねぇんだ、ただ家に居る弟の事が心配でよ・・・・」
この話でメンバーはリョーガに弟が居たことを初めてしり、何故そこまで弟が心配なのか疑問に思った。
「へぇ〜!越前って弟いたんだ!!いくつにゃの??」
「4歳だぜ♪」
「4歳か、結構離れてるんだな。で、越前は弟の何が心配なんだ??」
手塚が皆が気になっていた点をリョーガに聞いた。するとリョーガは、眉間に皺を寄せて話した。
「実は今ウチのお袋と親父が喧嘩中でよぉ、何時もなら従姉妹が喧嘩終わるまで弟の事外に連れ出してくれんだけど、今大学のサークルの合宿で居ないもんだから、我が弟はお袋と親父の喧嘩を初体験中なのよ;それが心配でよぉ〜」
そう言うとリョーガは本日60回目となる溜め息を吐いた。
リョーガの言葉に心優しい大石は、真剣に相談にのり始めた。
「ご両親の喧嘩の原因はなんなんだい??」
大石のその質問に、リョーガは一瞬答えるのを躊躇ったが素直に答えた。
「・・・・;弟がどっちの事が好きか・・・・・・;」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
その答えに周りは一瞬白けた後、全員がハモって叫んだ。
「「「「「はぁぁぁぁぁーーー!?!?!?」」」」」
皆の想像通りのリアクションにリョーガは苦笑しつつも、その訳も話した。
「まぁ、しょうがねぇんだよ。俺が言うのもなんなんだがよ、ウチのチビ助すげぇ可愛いのよ;だからお袋も親父も溺愛してて自分の方が絶対好かれてる!!ってしょっちゅう喧嘩だぜ;」
リョーガが本当に疲れた顔で語るので、気の毒になり慰めの言葉を掛けようとした時、部長である真田の大きな怒声が降って来た。
「貴様ら何時まで話しているつもりだ!!!他の者はもう自分の部屋に荷物を置きに行っているぞ!!直ぐに練習を開始するんだ急げ!手塚お前が付いていながらたるんどるぞ!!!!」
真田の言葉に手塚は、すまなそうに返事をして皆に部屋に行くよう促した。
「すまない真田、直ぐに行動する。皆話は此処までだ!各自部屋に荷物を置き次第、グランドに集合だ!!」
リョーガは結局、心配事を解消するなく練習に参加する事となった。
                           *
真田の言う通り、今回の合宿の練習は何時もよりハードなものだった。その為、殆んどの者が練習が終了した途端へたり込んでしまった。
平気な顔で立っているのは、青学の手塚・不二・リョーガ・大石・菊丸・乾・河村・海堂・桃城、氷帝は跡部・忍足・宍戸・鳳・日吉・樺地、立海は真田・柳・柳生・仁王・丸井・桑原・切原、山吹は亜久津のみ、不動峰は橘・神尾・伊武、聖ルドルフは赤澤・観月・裕太、少しバテ気味なのが氷帝の向日と慈郎、向日はスタミナ不足で慈郎は練習不足。山吹の南と東方そして室町もスタミナ不足、千石は練習のサボリ過ぎ、しかし皆暫く休むと見事に復活し普通に話していた。
「しっかし、キツかったにゃ〜!なあ越前!!」
練習が終わったという事ですっかり元気になった菊丸が、リョーガの肩をバシバシ叩きながら聞いた。
しかし、リョーガはまたボーっとしていた為反応が少し遅れた。
「・・・・・・、あ?あぁそうだな、でもあん位平気だろ」
リョーガの今朝と変わらない様子に青学メンバーは少々呆れていたが、何も知らない他校の人達はどうしたのか尋ねて来た。
「おい手塚、越前の奴どうしたんだよ?何時もはうるせぇ位陽気なのによ」
「そうやなぁ、何か変な病気にでもかかったんか?せやったら、はよぅ病院行った方がええで」
と、氷帝の跡部と忍足が手塚に声を掛けた。
2人の言葉の内容に、些か顔を引き攣らせながら自分がリョーガから聞いた事を2人に教えた。
「家に残してきた弟の事が心配らしくて、朝からあの調子だ;」
手塚が発した言葉を聞いた、跡部と忍足そしてその周りにいた者達はリョーガの意外な一面に驚いていた。
「アイツが弟の心配する様な奴だったとわなぁ〜驚いたぜ、なぁ樺地?」
「ウス・・・」
「その前にアイツに弟が居た事に驚きやで」
「俺が思うにあの人の弟だから、絶対可愛げないガキっすよ!!」
「あははははっ、それ言えてるぜ!赤也!!!」
今までボーっとしていたリョーガが切原と丸井の言葉に怒り、般若の形相で2人に詰め寄った。
「おい、テメェ等・・・今なんつった?ウチのチビ助が何だって??可愛げがない?テメェ等は見た事あんのかよチビ助をよぉ」
噂で『青学の越前を怒らせたら鬼を見る!!』と聞いた事があった2人は、今まさにその鬼を見ていた。
あまりの恐さに2人が黙っていると、イラつきがマックスになったリョーガが2人を殴ろうとした瞬間、もう1人鬼という言葉で有名な人物の鉄拳が降り注いだ。
《ゴィィィィィィィン!!!!》
「「いっっっっってぇーーーーー!!!!!」」
とてつもなく鈍い音の後に、切原と丸井の悲痛な叫びが轟いた。
叫んだ2人は衝撃を受けた頭を抑え、痛みに震えながら頭上を見上げると自分達のキャプテンであり『鬼の副部長』で有名な、真田が仁王立ちで目を険しくしながら見下ろしていた。
そして、2人と目が合うとカッと目を見開き、怒号を放った。
「この大馬鹿者どもが!!人の家族を愚弄するなど何たることだ!!!!!」
真田の怒りに2人は完璧に萎縮し、正座で説教を受けている状態になってしまった。その状況を見たリョーガは自分が怒っている事が馬鹿馬鹿しくなり、真田を止めた。
「真田もういいって、俺もついカッとなっちまったのも悪いんだし;」
リョーガがそう言うと真田は眉間に皺を寄せた険しい顔のまま、謝って来た。
「ウチの馬鹿共が失礼した、後で俺と蓮二からもう1度よく言い聞かせおく。いいな、お前達!」
「「うぃ〜ッス」」
その様子にリョーガは苦笑しつつ切原達に釘を刺した。
「テメェ等さっきの言葉、ウチのチビ助見たら絶対撤回しろよ!!」
ビシィィィっと指を差しながら自信満々に言うリョーガに一連の流れを見ていた跡部が、リョーガに尋ねた。
「おい、越前・・・お前の弟ってそんなに可愛いのか??」
跡部の質問にリョーガは目を輝かせながら語り始めた。
「そりゃ可愛いぜ!!目なんかデカくて、俺の後ちょこちょこ一生懸命着いて来るんだぜ!そんでもって声なんて鈴の音みてぇに綺麗なんだぜ〜vV」
リョーガが人格崩壊しながら自分の弟の可愛さについて語っていたその時・・・・・・・
「りょーが〜!!!」
と、可愛らしい声が聞こえて来て小さな塊がリョーガに突進して来た。
リョーガは突然の事に驚きながらも、自分の腕の中にいる存在を見て驚いた。
何故なら腕の中にいたのは、家にいるはずの可愛い可愛い弟が大きな荷物を持って居たのだから。
「リョーマ!!!何でお前此処に居るんだよ!?」
自分の足にしがみ付いている弟のリョーマを足から離し、しゃがみ込んで目線を合わせて問いかけると、俯いていた顔を上げて涙目で答えた。
「だって・・・、パパとママずっとケンカしてるんだもん・・・・・おれ、おうちにいたくなかった・・・・・・」
そんなリョーマを見て、リョーガは初めて実の両親を八つ裂ききしたいと思った。しかし、今はそんな事を考えていられない、リョーマをどうにかしなくてはいけなかった。
「そっか、リョーマはどっちも大好きだから2人の喧嘩なんか見たくなかったよな・・・・、で!お前此処までどうやって来たんだ??」
「Busできたの・・・・」
リョーマの言葉にリョーガは一瞬我が耳を疑った。何しろリョーマはまだ4歳で、ましてやバスになど一度も乗った事がないはずなのだから。
「お前!一人でバスに乗って来たのかよ!?よく迷わないで来れたな〜;」
リョーガに頭を撫で撫でされながら言われたリョーマは、コクンと小さく頷きながらポツリポツリと話始めた。
「Busテイにいたおねえさんにきいたの・・・・、『あとべSport Club』にどうしたらいけるのか・・・・、そしたらおねえさんが『何しに行くの?』ってきいてきたから、おにいちゃんにあいにいくっていったらココまでつれてきてくれたの」
4歳にしてこのしっかりとした行動力にリョーガは驚きを通り超し、関心しつつこれからどうするか悩んでいたが、自分達のことを小さい頃から良く知りなおかつ弟・リョーマのことを可愛がっている竜崎に頼めば何とかなるだろうという結論になり、リョーガはリョーマを抱え竜崎の元へ急いだのだった。
その後、リョーマのテニスの才能とリョーマ自身がリョーガ達と一緒にテニスがしたいと希望したので、リョーマは合宿に参加することとなりその事を今から皆に伝える事になった。
なので今、全員が食堂に集められ竜崎の話を聞いていた。
「急な話だが、リョーガの弟がこの合宿に参加することとなった。テニスの腕もなかなかのものでリョーガより巧いそうだ。まだ小さいので皆優しくしてやってくれ、じゃあリョーガ紹介頼んだぞ」
竜崎から話をバトンタッチされたリョーガは「へ〜い」と返事をして、自分の前にリョーマを連れてくると簡単に紹介した。
「え〜っと、コイツが俺の弟の越前リョーマ・4歳。泣かした奴は抹殺するからな♪ほら、チビ助挨拶しな」
「えちぜんりょーまです、おにいちゃんたちとイッパイTennisしたいからなかよくしてください」
リョーマはそう言うとペコリと頭を下げると、少し照れた様な笑みを浮かべた。
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